香り【スモーカー】 ページ13
香りが変わった、と最近よく言われる。
「Aさん…タバコ、吸い始めたんですか？」
「え…？」
目の前のたしぎちゃんが書類の束を整えながら、そう聞いてきた。純粋無垢な目に他意は無いのだろうということはわかる。
だけど、私は少しだけ目をそらした。
「A中将！ダメですよ、タバコなんて百害あって一利なしです！せっかくの美貌が台無しになりますよ！」
「それ、ヒナとかには言わないようにね」
そう言いながら、何となく話をはぐらかす。タバコを吸い始めた訳では無い。百害あって一利なしというのはよく分かっているし、今後タバコを吸う気もない。
だが、この匂いがついた理由に心当たりはある。
「…？はい！」
「それ、持っていくの？」
たしぎちゃんが抱えた書類に視線をやった。
「はい！スモーカーさんのところまで」
「ああ…そう。それなら、ついでに私が持っていくわ」
「え！？だ、ダメですよ…」
「いいの。私、スモーカーに用があるから」
「それなら…お願いしますね」
たしぎちゃんは渋々だが、書類を差し出してくれた。それを受け取り、廊下に出る。そして、大きく息を吐いた。
「…」
スン、と自分のコートの匂いを嗅いでみる。微かに香る独特の匂いに一瞬サッと顔が赤くなった。この匂いは、私のものじゃない。落としかけた書類の束を抱え直し、私はその匂いの主の部屋の戸を開けた。
「スモーカー」
部屋に入った瞬間、私のコートと同じ匂いがした。
「お前か。どうした？」
「書類、持ってきた」
「そうか」
トン、とスモーカーの机の上に書類を置く。スモーカーの目が一瞬見開かれ、訝しげに細められた。
「今日はえらく不機嫌だな」
「…あんたの匂いが完全にうつっちゃったのよ、このコート」
私はわざとらしいため息をついた。
「これ、また変えてもらうわ。そろそろほつれや破れが気になってきたし」
「…へぇ」
スモーカーがふっと煙を吐いた。
「それじゃ。私、次の仕事あるから」
部屋を出ようとした時だった。ふっと、鼻をあの匂いが掠める。
「そのコート、変えるな」
耳元で低い声が聞こえた。ゾク、と体が震える。
「いい『虫』除けになるぜ」
それに…とスモーカーの煙混じりの吐息が、ふっと耳にかかった。
「俺の匂いがついたものをお前が着てる、ってのは…なかなかそそる」
傷痕【マルコ】→←出来るもんなら【マルコ】 リクエスト・オタンコナスさん
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 346人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りと(プロフ) - こゆさん» お返事が遅くなってしまい、すみません<(_ _)>リクエスト承りました！ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で書かせて頂きますねヽ(*^^*)ノ (2021年8月11日 19時) (
レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
こゆ - 夢主がロシナンテと女性が仲良さげに話していて嫉妬する話を見て見たいです！ (2021年8月9日 23時) (レス) id: 0874e209a6 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - マリコさん» マリコさん、リクエストありがとうございます！しかし、残念ながらこのリクエストは受けられません…すみません<(_ _)>プリキュアに関する知識がないことや、私自身の地雷に抵触する部分がありますので…|ω･`)他の短編集でのリクエストをオススメします(´∀｀*) (2021年7月31日 1時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - 嫁子ちゃん。さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると、本当に励みになります(^^♪修正・加筆後に、また新たなお話を追加していく予定ですので、待っていていただければ嬉しいです(*´∀｀) (2021年7月31日 1時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ☆kon☆さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(>人<) (2021年7月31日 1時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りと | 作成日時：2018年1月16日 22時
