素敵な嘘【ウソップ】 ページ6
素敵な嘘を貴方はつくのね。
「ウソップさん、また冒険のお話をしてくれない？」
私の言葉にウソップさんは嬉しそうに笑った。
「お、興味があるのか？A！」
「ええ、ウソップさんのお話はワクワクするから！」
得意な笑顔を浮かべた彼が、隣に座れと促した。その言葉に甘えて、私はカウンター席の隣に座る。
「それじゃあ今日は…」
ウソップさんは楽しげな声で彼の物語を語り始めた。時に声音を変え、大きな身振り手振りで話されるその話は、この世界のワクワクを全て詰め合わせたかのようだった。
「…。」
でも、その話が本当は全て嘘だと知っている。それは、彼の素敵な噓の物語なのだ。
「と、オレはその島の怪物を倒したのさ！」
「すごい！ウソップさんはとっても強いのねぇ…！」
「フフフ、それ程でも無いぜ」
得意げに笑って、彼はまた新たな冒険譚を語り始める。その声を聞きながら、私は彼との別れの時が近づいていることに気が付いた。夢のような物語を話す彼の声を聞くのは、きっとこれが最後になる。話を終えたウソップさんに、私はそっと声をかけた。
「ウソップさん達は…もうすぐ行ってしまうんですよね」
「ああ、そうだ！次の冒険に行くのさ！」
ついて行きたい。でも、それは私にはできない。
「…もう会えないですね」
ウソップさんは海賊だ。ついて行きたいけど、私は海賊として生きていけるほどに強くない。
「何でだ？会えるさ」
「え？」
驚く私にウソップさんは楽し気に笑った。
「だって、もう一回生きてここまでこれりゃあいいんだろ？」
「で、でも、そんなの無謀─」
「だーいじょうぶだって！オレの乗ってる船は世界で一番の海賊船、海賊王の船なんだぜ？」
そう言って笑っているウソップさんは、嘘などついていない。本気でそう思っている。それが、私にはあまりにも眩しく見えた。
「まだ不安なのかよ…。それなら、そうだな…A、指切りしようぜ！」
「え？」
「オレは必ずこの海を一周して、世界一の海の戦士になる！そうなったら必ずこの島にもう1度遊びに来る」
だから、とウソップさんは少し真面目な顔をした。
「オレの事、待っててくれないか？」
突き出された貴方の小指に自分の小指を絡めた。
「ウソップさん、私…あなたを待ってます」
そう言った私に、ウソップさんが笑った。その笑顔を見ながら、私は祈った。
(どうかこの約束だけは、素敵な嘘で終わらせないで)
素直じゃない優しさ【カク】 リクエスト･あさみかんさん→←真っ赤【ロブ・ルッチ】 リクエスト･あさみかんさん
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 347人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りと(プロフ) - こゆさん» お返事が遅くなってしまい、すみません<(_ _)>リクエスト承りました！ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で書かせて頂きますねヽ(*^^*)ノ (2021年8月11日 19時) (
レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
こゆ - 夢主がロシナンテと女性が仲良さげに話していて嫉妬する話を見て見たいです！ (2021年8月9日 23時) (レス) id: 0874e209a6 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - マリコさん» マリコさん、リクエストありがとうございます！しかし、残念ながらこのリクエストは受けられません…すみません<(_ _)>プリキュアに関する知識がないことや、私自身の地雷に抵触する部分がありますので…|ω･`)他の短編集でのリクエストをオススメします(´∀｀*) (2021年7月31日 1時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - 嫁子ちゃん。さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると、本当に励みになります(^^♪修正・加筆後に、また新たなお話を追加していく予定ですので、待っていていただければ嬉しいです(*´∀｀) (2021年7月31日 1時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ☆kon☆さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(>人<) (2021年7月31日 1時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りと | 作成日時：2018年1月16日 22時
