短編集〈ユーリ!!! on ICE〉 (ページ2)

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「Aちゃん、僕、すごくかっこ悪い所を...」

「そんなことない！勇利君本当にかっこよかったよ。」

思わず勇利君の手を握ってしまった。

「あっ、ごめんね、」

慌てて手を離したら、ガッと腕を掴まれた。

「勇利君...？」

「ごめん、Aちゃん。僕ね、」

勇利君は下を向きながら、小さな声で話し始めた。

「小さい頃から、Aちゃんの事、好きでした。」

時が止まった気がした。
ずっと独りよがりだと思っていた。
初恋をこじらせてモヤモヤしているのは自分だけで、もうすでに恋人を作ってしまっているのかなとも考えていた。
勇利君も、同じこと思ってくれてたんだ...。

「勇利君、私も。」

「えっ、」

「私も、ずっとずっと好きでした。」

勇利君の手を両手で包む。
きっと今、顔は真っ赤なんだろうな。
勇利君も、マスクをかけていてもはっきりわかるくらい顔を赤くしていた。

「何も報告せずに行っちゃってごめんね。ずっと待っててくれて、本当にありがとう。」

勇利君はつけていたマスクを下に下げて、顎にひっかけた。
そして、にっこり微笑んだ。
昔と変わらない優しそうな笑顔。
何年もこの笑顔を待っていたんだ。

「やっぱり、かっこいい」

そうつぶやくと勇利君は更に顔を真っ赤にして、私の腕をぐっと引き、自分の方に引き寄せた。

「Aちゃん、大好き。」

「私も...」

勇利君の背中に手を回す。
厚着しているけど、その背中はちゃんと男の人のそれだ。
あったかいなぁ...

お互い顔を見合わせて、また笑う。
そしてどちらからとでもなく手を繋ぎ、公園を後にした。

「Aちゃん、今は家に来ない？一緒にカツ丼食べよう。」

「ありがとう！勇利君のお家のカツ丼、久しぶりだなぁ。」

「母さん達もきっと喜ぶよ。」

あぁ、あなたはやっぱり私のヒーローなんだ。

積もった雪に、二人分の足跡が、確かについていった。