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きんときside
俺は今までずっと1人だったか?レナと出会うまで1人でずっとこんな気持ちで居たのか。
モヤモヤ浮かぶ誰かの顔と声は手に届きそうで届かないような感覚だった。
レナ「きんとき、君?……ダメ?」
断れない性格な上、女性相手だから余計に何も言えない。むしろ男として俺がエスコートしなければならない。
そうやって生きてきた____例え、俺自身がそんな風に生きたくなくとも。
血が騒ぐ。
その度に、唇を噛んだ。
「………………いいね。行こうか」
どうして体は抗わないのか。流されたままなのか。もう全部どうでも良くなってるんだ。
何とも言えないこの脱力感さえ心地よく寂しかった。
彼女はベンチから勢い良く立ち上がると、俺の目の前へ立ち塞がった。
嘘臭い笑顔が陽に照らされて輝いているような、隠されているような。
レナ「そろそろ、勝負時やな」
先程までニコニコとしていた笑顔からガラッと豹変し獲物を狙うような表情を浮かべる。
意を決したように彼女は口を開きチャームポイントである八重歯を見せた。
レナ「ウチ、悪魔やねん」
____悪魔??
レナ「悪魔って言っても、ウチは色欲の悪魔 “ サキュバス ” なんよ」
彼女が話せば話すほど彼女の周りに黒いモヤが増えていく。これが____魔力?
それは俺ら2人を、この空間を包み込むように囲んだ。というよりは、周りから幽閉するという意味の方が強いのかもしれないが。
レナ「きんとき君。キミに今人間としての生き甲斐なんてもう無いはずや。ウチが相手してあげるにもリミットが近くてなぁ。だから___」
____
そうだ。今の俺にはレナしかいない。
彼女しか俺を見てくれない。認めてくれない。
一人ぼっちはもう嫌なんだ____。
“ ずっと幽閉 ” なんかごめんなんだよ。
今差し伸べてくれた手を取ったら、俺はもう楽になれるのかな。
やっと開放されるのかな____。
《きんとき!》
その手を取ろうとした____刹那。
安心する声が、胸をいっぱいにして締め付ける。
なんで今まで忘れていたんだろうと目尻が熱くなった。
この手を取ってはいけない。だって。
俺は悪魔が嫌いだし____同時に大切な人が居た。
失ってはいけない人、傍に居て欲しい人。
恋しいよ。
俺は君じゃなきゃダメなんだよ。A。
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うさちゃ(プロフ) - mekanさん» コメントありがとうございます!面白いと言って頂けて本当に嬉しいしとても光栄です!!これからも応援よろしくお願いします!!!笑 (3月26日 8時) (レス) id: 1f3f4e31c6 (このIDを非表示/違反報告)
mekan - コメント失礼します!!めちゃくちゃ面白いです!!一つ一つの言葉がうまく表現されていて続きが気になりまくりました!!Nakamu さんのお話も頑張ってください!! (3月20日 19時) (レス) @page20 id: facc464c1c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うさちゃ | 作成日時:2023年7月27日 12時