天国から君へ【すとぷり】【さとみ】

泣いてしまう ページ4

『あ、撮れてるっぽいね。え〜と、こんにちは…でいっか。

　やっほ〜、さとみくん。元気にしてるかな？私ね、ビデオレターとることにしたよ。

　カメラ回されるのって、恥ずかしいね』


画面の先では、いつも見てたAの顔。少し照れてて、顔が赤い。

愛しさと、涙が、こみ上げる。


『多分、このビデオをさとみくんが見てるときは私はさとみくんのそばには居ない。

　まあ、私の病気が治らないってことは分かってたから…ね。

　配信とか、動画を投稿したりとかで忙しいのに…お見舞いとか来てくれて、ありがとう』


さ「っ…！」



ピッとビデオを止める。

優しく微笑んだAが、あまりにも綺麗で。儚くて。悲しかったから。

止めちゃダメだ、泣いちゃダメだってわかってても、両目からは涙がこぼれる。


さ「泣いちまうだろーが…」


薄暗い部屋の中、俺の周りにはひながぐるぐると歩いている。

ピッと、前足で再生ボタンを必死に押すひな。

ジッとこっちを見つめてくる。


さ「ひなも…だよな…」


受け入れろよって言ってるみたいで…。

何回も、ひなが押してるうち、またビデオが再生され始めた。


『あ、悲しくなっても止めないでよね？

　私がね、今言いたいのはありがとうっていう、感謝の気持ちだよ。ほんとにありがとう。

　たくさんのものを貰って、ただ何も返せないってことが一番の心残りだなぁ。ごめんね。

　病室で話したこと、ぜぇんぶ…覚えてるよ。
　
　薬とかで苦しんでるときに背中さすりながら

「俺が変わってやりたい。お前が苦しんでるのは嫌だ」っていってくれたこと。

　その気持ちだけでも、私は救われてたよ。

　でもね、立場が逆だったら私、耐えらんなくてさとみくんの前で泣いちゃってたかも。

　さとみくんは強いね。泣かないで、病室入る前で笑顔作ってくれてたこと、私は知ってるよ』


さ「一番強ぇのは、Aだろ…」



苦しくて、ツライ、薬の副作用でも「大丈夫…心配しないで」なんて…

普通、言えねえだろ…。

思い出は。→←彼女から

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す