Episode97：演算 ページ10
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なんて、【自分自身】を騙す。
――無神コウが、心の中を読める事なんて計画の内なのだから。
その特別な能力さえも取り込んで、自分の懐を傷めずに利益を得て見せる。
佐伯莉緒の、世間一般にみる【平凡な明るい少女】の、【どこにでもいそうでいない普通の少女】の、一番恐ろしい所――それは【無意識の内に自分自身をも騙す】こと。
この場にいる誰にもできない、彼女にだけ許された特権である。――無神コウも似たようなことが出来るのかもしれないけれど。そうとも言えど、無神コウのように、彼女は他に特別なことが出来るわけでは無い。
無神家一同のように【牙を持ち人ならざる力】を持つわけでもない。
柊静香のように【何事にも動じない冷静な心】と【磨き上げてきた吸血鬼を滅ぼす能力】だなんてものもありはしない。切り札と言えるものはこの【無意識】と、保健室の彼に手渡された【アレ】のみ――
そう考えてみれば、保健室で莉緒が出会ったあの保険医はそれを察して、彼女に【×××】を渡したのかもしれなかった。彼女はその時の記憶をあやふやにしか覚えていないようだけれど。ふとした時に、しっかりと思い出すのかもしれない。
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「――よろしく、なんてするつもり毛頭ないけれど」
クラスメイトに見せる顔とははっきりと違った、【吸血鬼ハンター】としての冷徹な顔がひっそりと現れる。やっぱり仮面を被るのは止めちゃったんだね。まぁ、ここまで来たからには無神家に対して被る意味なんて静香にはもう存在しないのだろうけど。
「部屋を案内しよう」
これはまた豪華な手すりの付いた大きい階段を上り(階段にもなんか高そうなカーペットが敷いてあった)、とっても広いモノクロ調の廊下に出た。……ここまで歩いてきて思ったことが沢山ある。ありすぎて色々とパンクしそう。
――廊下？ これ本当に廊下なの？ ねぇねぇ、ここってもしかして本当は廊下じゃなくってどっかの王様とかが歩いたりする場所じゃないの？ 敷いてあるカーペットとか踏んじゃったけどいいの？ ねぇ、お金とか請求されないよね？ 四人しか住んでいないだよね？ ねぇ、本当はまだ兄弟いるんじゃない？ 後数十人は住んでそうだよ？ 四人って嘘じゃないんだよね？ 君たちなら平気で嘘つきそうだけど(ひどい)、まさかまだ吸血鬼とやらが住んでたりしないよね？
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