Episode95：再会 ページ8
――う、あのひとだ。
今の感情が顔に出てしまったかもしれない。でもきっと大丈夫。今の私を見ている人なんていない。人なんて――いないんだから。そう考えなおし自分を造り直す。
「やっと来たのか」
「迎えが遅かったわ」
目の前では静香と無神ルキが水面下で火花を散らしあっている。目には見えないけれどピリピリとした雰囲気が辺りを包み込む。その空気に少し物怖じながらも、私は静香の後ろにスッと隠れた。
――気配を、殺すな。凡人だと言うことを見せつけろ。
柊静香がバトルを仕掛ける黒幕となるのなら、佐伯莉緒はその手足になろう。柊静香が主将だと相手に思わせて、凡人の私が情報を収集するのだ。そのために、警戒されてはならない。……正直、ここに来るまでは、私がバチバチと火花を散らして目の前の無神兄弟へと警戒のベルを極大限にまで鳴らし、静香が静かに忍び寄り、相手の警戒をゆっくりと解いていくのだと思っていた。ところがどっこい。正反対だった。
「それはすまなかった」
くくっ、と喉を鳴らし笑う無神ルキ。教室ではあまり見ない笑みが口角に浮かぶ。その笑みを見た瞬間、”あぁ、私達は本当に無神家にいるのだ”と思った。普段見られない仕草。家の中の雰囲気。その全てが今までの立場とは一変してしまったのだという実感を一気に呼び覚ます。
「この兄弟たちにあたしたちと手を組むよう触れかけたのはあなたでしょう」
「ああ。お前が協力しようと話し掛けてきたのだろう？ まさか、吸血鬼ハンターとはな。のこのことこの家にやって来て、無事でいられると思うなよ」
ニヒルな笑みを顔に浮かべ、さらりと物騒なことを口にする。ちらりと見えた牙が、怪しく妖艶に光っていた。牙が彼を吸血鬼だと確証させる証拠のようで、ふっと目を逸らした。さっきのふとした笑顔とは正反対の表情。”無事にいられるとは思うなよ”これは単なる脅しなのだろう。静香の後ろからそっと様子を伺うように顔を出し、怯えている振りをした。
――正直、怖いとは思わない。まだ実感が湧いていないのだから。
＊*＊*＊*＊*＊*＊*
更新が遅くなってごめんなさい。
冬休み明けテストやら課題やらが重なって時間が十分に取れないことが多く、更新が疎かになってしまいがちでした。課題はまだ終わっていないのでこれからも時間の合間を縫って更新していきたいと思います。
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