Episode93：挑発 ページ6
「気にしないで」
「って言われると」
「気にしちゃう、でしょ」
もどかしそうな表情で言う莉緒の言葉の先を読んで発言すると、驚いたような顔をした。
「ぴんぽん、正解。で、教えてくれるんだよね？」
「今は無理だけど、明日なら」
「りょーかい」
返事をし、ドアに近づきノックをする莉緒。ドアノッカーあるわよって言おうかと思ったら、中から無神コウの声が聞こえた。少しすると私服姿の無神コウが現れた。
「やぁやぁコウ君。出てくるのが遅いよ、しかも私が危ないことを考えかけた瞬間に出てくるとかどこまで用意周到な奴なの……」
「んー？ 何言ってるの〜？ しかも危ない考えって何のこと！？」
「…貴方たちが来いといったくせに、ドアを開けるのが遅いわね。 …本当は気づいてたんでしょう。ずっと蝙蝠に見張らせて」
「ふふっ、バレてたー？ まぁそれもそうだよね。ハンターさん」
またあの朱殷色の瞳を輝かせた。
「……除くのはやめて頂戴、変態？」
「……いいじゃん、減るもんじゃないし。 ていうか、おれをライトくんみたいに言わないでくんない？」
「それはどうかしら。 寒いわ。とりあえず中に入れて。」
「確かにめっちゃ寒い…。 コウ君、とにかく私たちを中に入れてくれないかな」
「…ドーゾ」
屋敷に入ると、思っていたよりは暖かった。無神兄弟は全員吸血鬼だから、外とあんまり変わらないかと思ったけれど、意外だった。
「あったかいね！ ね、静香」
「そうね…予想を超えたわ」
長い廊下を歩き、リビングに辿り着くと、パチパチと音を立てて暖炉から赤々と燃える火が見えた。暖炉前のソファには本を読んでいる無神ルキ。窓のそばに突っ立って、腕を組んでいる無神ユーマ。無神ルキの向かいのソファでナイフを見つめる無神アズサ。
「やっと来たのか」
「迎えが遅かったわ」
「それはすまなかった」
くくっ、と喉を鳴らせて笑う無神ルキ。“この兄弟たちにあたしたちと手を組むよう触れかけたのあなたでしょう”と見せかけの笑みを浮かべて問うた。
「ああ…。 お前が協力しようと話し掛けてきたのだろう？ まさか、吸血鬼ハンターとはな。のこのここの家にやって来て、無事でいられると思うなよ…」
意味深な笑みを浮かべて射るような瞳で見つめられる。真っ黒な瞳で。
「…無事でいられないようなことをされたら、逆にあたしがアンタたちを微塵の欠片も残さず消し去ってあげるわよ」
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