Episode92：監視 ページ5
柊静香side
「ねぇ、此処みたいだけど……。無神の皆ってこんなすっごいお家に住んでたんだね〜」
無神家に着き、一言、莉緒はつぶやいた。広大な屋敷、確かに凄いとは思う。まぁ、そこまで偉大さを感じるわけでもないが。どうせカールハインツから得た別荘のうちのひとつなんだろう、と息をついた。
「……どうしようかしら」
「んーっと、正面突破するか、裏の裏をかいて別の所から侵入するか、それとも――」
いつも通り、…否、強気で言う莉緒の声色は少し躊躇いを持っているような気がした。
「静香はどれがいいと思う？」
…そんなの、もちろん。
「正面突破」
「言うと思った。ふふっ、やっぱり”変わらない”ね」
「莉緒こそ」
綺麗な笑顔で言った彼女に笑い返した。
何かの気配を感じ、目の前にある屋敷の上に視線を向けた。数匹の蝙蝠がキィキィと瞳を光らせていた。
(……あいつ等、あたしたちを監視しているわけね。大方、無神ルキの言いつけでしょう。…ったく、来いとか言っておいて、蝙蝠なんぞに見張らせるなんて……馬鹿にしているのかしら)
「…ふざけんじゃないわよ…」
誰にも聞こえない声でぼそり、と呟き、蝙蝠に向かって睨みを効かせた。途端に黙った蝙蝠たちに向かって鼻で笑う。
あんたたちのご主人は家の中にいるってワケね…。すると隣で、空気が揺れた音がした。大方、風が吹いたか、莉緒が笑ったかのどっちかだろう。無神家のドアを目の前に莉緒が口にした感想に少し笑ってしまった。
「莉緒、でかいと大きいって同じじゃないかしら」
そう指摘すると焦ったように慌ただしく問いを繰り返す莉緒。
「あ、それよりもインターホンってないのかな？ 大丈夫かな？ 私達って分かるかな？ 悪徳な勧誘業者と勘違いされないかな？ 追い返されたり無視されたりしないかな……？」
インターホンっていうより、ドアノッカーがある。さすがに確認できるし、悪徳業者とも思われない。まして、追い返されたりすることなんて確実に無い。きっと今からここを出て行こうとしたら、蝙蝠に引き止められる。
「それなら、大丈夫だと思うわ。”監視の目”もあるみたいだしね」
「……？」
キッ、と屋根のそばに居る蝙蝠に向かって視線を向ける。
(…ね、貴方たちのご主人は中にいるんでしょう？ いつまで待たせる気なのかしらね)
蝙蝠を見続ける。…そして、隣からの視線を感じた。
「気にしないで」
と、声をかけた。
やましぃ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 50人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
