満月ノ記憶。【DIABOLIKLOVERS】

39/約束と言う名の呪縛を ページ39

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[レイside]



「……いや」

「それも駄目なのか、……どんな形なら君は私の交渉に応じてくれる？」

　目の前の白い髪の毛の不思議な雰囲気を持つ人が、私に問いかける。その人は、普通ではありえない様な赤い瞳をしていた。
―……この人はきっと『人間』じゃない。そしてわたしも、『人間』じゃない。


「…………」


　周りの木や、花が騒めきはじめたように感じた。どうしてそう感じたのかは分からないけれど、直観だったように思える。この時、引き返せばよかったんだろうか。


―――こうしょうとはなんのこと？
―――このひとはわたしになにをさせたいの？
―――なんでこのひとはここにいるの？
―――わたしはどうして、このひとのはなしをきいているの？


色々な疑問があったのだけれど、どうしたらいいのか全く分からなかったから取り敢えず話を聞くことにしてみた。―――ここで私が引き返していたら、どうなっていたのだろうと、今では思う。


「―――そうだ。約束、と言う形なら君は私の手のひらで踊ってくれるかい？」

「―――やく、そく？」


　聞きなれない単語に思わず私は聞き返す。


「そう『約束』だ。」

「……それは、なに？」

「相手に対し、または互いに、取り決めを行うこと。―――なんだが、君にはまだ分からないかもしれないな。まぁ、簡単に行ってしまうとお互いが正当な取引をするたまに決めること。破ってはイケない規則、みたいなものだ。」


　全く訳が分からない説明だったのだけれど、その言葉はやけに私の心の奥を騒がせた。お互いに、約束すること。ヤクソク、約束――――。


「やぶっちゃ、いけないもの……。やくそく……」


　ぐるぐる回るその単語と説明に、私の頭は混乱状態になる。聞きなれない単語。けれどどこかで聞いた事が在るような。無いような。


　私は昔、『ヤクソク』を―――したことがある?



　いくら言葉を重ねても言葉にならない混乱と焦燥が、頭の中でぎりぎりと軋みまわる。どうしてこんな気持ちになるのか分からない。この想いは、気持ちは、焦りは、混乱は、私は。



―――気分が悪い。





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