26/捕食者の視線と被食者 ページ29
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「ほーんと、美味しそうな匂いしてるよねぇ、ビッチちゃんって」
ライトは耳に口を近づけて――
「ひぁっ!」
ライトをドンっと突き飛ばし、逃げようとするユイ。
けれど、よほど焦っていたのか足を絡ませて倒れこんでしまった。
「ぃ、痛……」
膝を見ると、転んだ拍子に足を擦ってしまったようで、血が滲んでいた。
思わず膝を抑えるも、ついた傷と痛みは消えない。
(本当に―――ついてない)
視線。
視線。
視線。
背後に感じる視線。
自分の膝に血が滲む痛みを堪えながら恐る恐る彼らを見る。
(視線が―――変わった。なんで―――…)
今さっきの雰囲気とは打って変わって。
まるで獲物を見つけた猛獣の様。
上から見下す視線。
視線。視線。視線。視線。視線。視線。視線。視線。
(今さっきと何か変わったことと言えば――…。)
……――血。
自分の足に流れる血をはっと見る。
「ぇ……? ヴァ、ヴァンパイア……?」
ユイはまるで御伽噺にでてくる様な名前を口にした。
”ヴァンパイヤ”――――。
この家にユイが来てから、ずっと感じていた違和感。
それがスルッとほどけたような気がした。
「こ、これでもくらえ!」
そう言ってユイは何かを取り出した。
十字架。
ユイは懐から取り出した十字架を目の前の捕食者に突き出す。
吸血鬼―――ヴァンパイヤを信じない人から見れば。
馬鹿らしい行動だったかもしれない。
「ふっ……」
シュウが口角を上げた。
「え?」
「―――――…全くヴァンパイヤはにんにく、十字架、太陽、に弱いなど。――人間が作った御伽噺が我々に通じるとでも? それこそ愚かな人間の思い上がりと言うものです。……不愉快極まりない」
レイジが呆れたように淡々と述べる。
人間を―――見下している様に。
(この人たちは――…、吸血鬼だ)
ユイは頭でそう判断して、颯爽とドアに向かって駆ける。
大きなドアをガチャリと開けて―――逃げる。
「全く―――躾がなっていませんね」
レイジの呟きがエントランスに小さく響いた。
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走る。駆ける。逃げる。
―――まさに、逃亡者の様に。
「……壊してあげる」
(なんで前に―――)
前にはいつの間にか紫の髪の―――
自分の方が先にでたはずなのにどうして―――
そんな疑問を持ちながらも走る足は止めない。
追いかけてくる気は毛頭ないらしく、ユイは一目散に駆ける。
この迷宮からの―――出口を目指して。
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角砂糖(プロフ) - 恵香さん» 本当ですかーっ!?ありがとうございますーっ!!更新頑張りますううううっ!!!コメントありがとうございますーっ!!!何よりの励みになります!!! (2016年5月29日 18時) (レス) id: 1a5848f332 (このIDを非表示/違反報告)
恵香(プロフ) - この作品とっても好きなので応援しています!!頑張ってください!!!ヾ(゚▽゚*)>フレー!!フレー!!<(*゚▽゚)ツ (2016年5月29日 18時) (レス) id: 885314e838 (このIDを非表示/違反報告)
恵香(プロフ) - 1がいいです! (2016年5月29日 18時) (レス) id: 885314e838 (このIDを非表示/違反報告)
みかん大好き(プロフ) - さとぅさん» これからも応援してます! (2016年5月28日 7時) (レス) id: d1b3892697 (このIDを非表示/違反報告)
さとぅ(プロフ) - みかん大好きさん» コメントありがとうございます! (2016年5月27日 22時) (レス) id: 1a5848f332 (このIDを非表示/違反報告)
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