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休暇の間は去年と同じ様にリーマスの家で過ごした。
穏やかな時間が過ぎていく中でいくつか気づいたことがある。
1つ目は、家が前よりも傷んでいること。
床を踏む度にギシギシと音を立て、壁には亀裂が入っているところもあった。
直さなくて良いのかと聞くと、彼はなんだか気まずそうに「そのままで良いんだ」と答えるのだ。
2つ目はリーマスがだいぶ痩せていること。
ヴォルデモート失脚以降……と言うよりは、ジェームズ達が殺されシリウスがアズカバンに投獄された日からめっきり食べる量が減っていた。
筋肉も昔より落ちてきたようでなんだか頼りない。
3つ目、なんか全体的に元気がない。
去年は至って普通だったけどな……?と思いながら彼を観察する。
「………いてっ」
タンスの角に膝をぶつけたり……。
「あちっ……あぁ、またやっちゃったな」
沸騰したヤカンを素手で触って火傷したり……。
「……はぁ」
ふとした時に肩を落としてため息を吐くことが多くなった。
遂にはボロボロになったコートの穴を端布で縫おうとして、針が何度も彼の指を貫いている。
もう黙っていられなくなって彼からそれを取り上げた。
「………あ、」
『僕がやるよ、君は少し休んだ方が良い』
「………すまないね」
悲しげに俯いて謝るリーマス。
前もあったな……こんなこと。
『……謝ることなんて何もないだろ?』
ソファーに座ってコートを縫う。
『そろそろ新しいのを買わなくてはね』
「いや、それでいいんだ。
………それがいいんだ」
『………?』
暖炉を向いてカーペットの上に座るリーマスの顔は見えない。
なんだろう………この気持ち。
『なぁ、リーマス』
「……ん?」
『何かあったのか……?』
「…………」
パチッと薪が割れる音。
しばらく黙って、リーマスは消え入りそうな声で言った。
「………仕事」
『……え?』
「クビになったんだ……」
『………』
「私が狼人間だと……バレてしまってね」
乾いた笑いを出すリーマス。
狼人間は魔法界では穢れた者として扱われる。
その偏見から、リーマスも職場を変わら無くてはならない事が何度もあった。
それもただクビになるだけじゃない、散々罵られ物を投げられ………追い出されるのだ。
頼りない背中が……微かに震えていて
僕は堪らず後ろから彼を抱きしめた。
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わさび(プロフ) - さやかさん» 嬉しいコメントありがとうございます!!私もアズカバンの囚人が1番好きなので、ついつい長々と書いてしまいました!笑 最後までよろしくお願いします!!! (2022年9月29日 21時) (レス) id: 4f48927b1a (このIDを非表示/違反報告)
さやか(プロフ) - はじめまして、更新お疲れ様です!個人的にハリポタの中でアズカバンの囚人が1番好きなのでほんとうに楽しませてもらっています!これからもよろしくお願いします!(^^) (2022年9月29日 20時) (レス) @page50 id: dad1d07543 (このIDを非表示/違反報告)
わさび(プロフ) - 見知らぬ子猫さん» わわ!一気に!?それはお疲れ様でした……!とっても嬉しいコメントありがとうございます!!亀更新ですが最後まで頑張りますのでよろしくお願いします!! (2022年9月26日 7時) (レス) id: 4f48927b1a (このIDを非表示/違反報告)
見知らぬ子猫(プロフ) - ここまで一気に見させてもらったんですけど面白すぎます!!これからの展開がすごく楽しみです!頑張ってください! (2022年9月26日 4時) (レス) @page37 id: 1647542551 (このIDを非表示/違反報告)
わさび(プロフ) - りおさん» ありがとうございます!!!頑張ります!!!! (2022年9月8日 21時) (レス) id: 4f48927b1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わさび | 作成日時:2022年9月8日 14時