弐ノ型 ページ3
待ち望んでいた朝日が、全身に降り注ぐ。
本来であればその恩恵を十分に受けられる場所に身体が転がっているのだが、体は冬の空のように冷たい。
呼吸もフー、フー、と途切れ途切れで肺がジグジグと痛みを訴えるが、目は辛うじて使える。
焦点が合わない視界に、隠が生きている隊士の手当ての為に慌ただしく動いているのと、私の側で必死に薬を注入してくれている姿が入る。
薬の無駄だ、他の奴に使ってくれ。私は助からない。
そう告げようとしても、先程の激戦で限界を超えて動いていた身体は、一向に音を出すことができないまま虚空を見つめるだけだ。
今まで紡いだ努力の成果を噛み締めて泣く声、「まだ終わっていない」と己を叱咤しながら救護に回る声。
壊れたラジオみたいに途切れ朦朧としていく意識の中、私を慕ってくれていた隠たちの声を聴いていた。
「Aさん、私たち、勝ったんですよ……
だから死なないでぐだざいよぉ……！！」
「馬っ鹿！まだAさんは死んでねぇ！」
鼻を啜りながら懸命に救命措置を取っているのが分かって、思わず胸に暖かい感情が込み上げてくる。
千切れた手足も、抉れた腹も。とっくに痛みはかんじない。
本人よりも一足先に、そういう感覚も死んでしまったのかもしれない。これがどういうことかくらいは、私にもわかる。
無惨は、死んだ。
私たちが夢見ていた、「鬼のいない世界」の続きを見ることは叶わなくなってしまったけれど、多くの人の命を救ったことに、変わりはない。
続きを見られないのはとても心惜しいが、最期に大切な人たちに囲まれて逝けるなんて、ちょっと贅沢なくらいに幸せだ。
音が雰囲気でしか聴き取れなくなってきて、視界もぐにゃりと気持ち悪く歪む。
"人生"というには大分短い一生だったと思うし、これまでの戦いは歴史の闇に葬られるだろう。
けれど、命を懸けて人を、未来を守ったことは、誇りに思っている。
終ぞ残っていた感覚も消え失せ、何も感じることができなくなった。
唯一、思考だけがまだ残されてはいるものの、これがいつ消えるかもわからない。まさに風前の灯火だ。
最期まで、私は私の責務を全うできたのだろうか。
その自問の答えは出なかった。
こうして、私は、土に溶けるように静かに終わっていく。
＿あぁ、でも。
もし、来世というものがあったなら。
もし、鬼のいない世界で、もう一度人間として生まれ変わることができたなら。
もう一度、皆と＿＿＿＿＿＿。
ラッキー食べ物
すし
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ねぎ＋(プロフ) - 水稀さん» ありがとうございます！銭湯…同音とはいえ、お恥ずかしい限りです…これからはできる限り誤字をなくしていきます！ご指摘ありがとうございます！ (2021年8月3日 22時) (
レス) id: 124a1bc937 (このIDを非表示/違反報告)
水稀 - 最新話で、轟君を捕縛したところで、恐らくですが、誤字を見つけました。銭湯の所多分戦闘だと思います。間違いだったらすみません。 (2021年8月2日 14時) (レス) id: 41c46c637f (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ＋(プロフ) - 水稀さん» コメントありがとうございます！そうなんです、戦闘シーンが思った以上に難しくて苦戦してます 笑 面白いと言っていただいてとても励みになります！これからも更新していくので、応援宜しくお願いします！ (2021年7月15日 1時) (レス) id: 124a1bc937 (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ＋(プロフ) - 高校ぐらし！！さん» コメントありがとうございます！面白いと思っていただけて良かったです！今後も地道に活動していくので、応援宜しくお願いします！ (2021年7月15日 1時) (レス) id: 124a1bc937 (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ＋(プロフ) - 朱鷺巫女さん» コメントありがとうございます！これからの展開も頑張っていくので、応援宜しくお願いします！ (2021年7月15日 1時) (レス) id: 124a1bc937 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねぎ＋ | 作成日時：2021年2月21日 15時
