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Side七五三掛





それから2日後、俺は全部の医療器具を取り去った海人くんと初めて対面した。





ご両親に体を拭いてもらって、怪我も目立たない状態になった海人くんの小さい顔を見つめる。







もう一度、この子が目を開けられていたら。話せていたら。もっと、大きくなったら。どんな表情を見せただろう。







「……ごめんね。」





それ以外の言葉は、もうなかった。乱暴につかめば折れてしまいそうな細い手首を、そっと持ち上げる。





名前の書かれたリストバンドに、そっとはさみの刃を当てる。





これをつけていた子供時代、本当に苦しかった。でも、これは生きている証でもあったんだ。









「助けてあげられなくて、ごめん…!」





パチン、とはさみが音を立てる。その音は、いつまでも耳に残っていた。













次の日、俺は久しぶりに休みをもらった。休みなんて、何をしたらいいかわからない。そう思っている間に気づけば1日は過ぎて、俺はまた研修先の病院に出勤した。







「しめ、おはよう。」



「……あぁ、おはようございます。」





後ろを振り返ると、如恵留先生が立っていた。軽く会釈して入り口に向かおうとした瞬間、腕をつかまれる。





「え、なんですか……?」



「なんですかじゃないよ。顔色が悪い。」





今日は休んだ方がいい、と言う先生の言葉に、俺は首を横に振った。





「……仕事が、あるんです。」



「そんな状態で仕事をしたって、いいことないだろ。むしろ、足手まといになるかもしれない。」





足手まとい、と言われた瞬間、頭の奥を揺さぶられたような感覚に襲われた。





血液にまみれた、あの子の体。すがりつく両親。何もできない自分。グラグラ揺れる脳みそから、映像が振り落とされていく。







パチン、と耳元ではさみの音が聞こえた気がした。







「……っ、はぁ、ふ、ぅ、っケホケホ、」



「しめ!?」





すぐに背中が温もりに包まれる。でも、俺はなぜかそれから逃げなくちゃいけないような気がした。





「ハァハァ、だ、め、ヒュっ、いか、い、行かなきゃ、…っゲホゲホ、!」





なんとか立ち上がって、足を前に出す。でも、ほんの少し前に進んだところで、俺の意識ははさみで断ち切られたように途切れてしまった。

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おさと(プロフ) - もなかさん» もなか様、こんにちは!コメントとっても嬉しいです( ; ; )こちらこそ、素敵なリクエストを本当にありがとうございました!! (9月3日 17時) (レス) id: e06b49d6d2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - とても素敵なお話をありがとうございました!リクエスト自体初めてであんなざっくりした内容がこんな素敵なお話になるなんて思ってなかったです!キュッとなってホロリとしてホワッと心温まりました。ありがとうございました! (8月30日 22時) (レス) @page14 id: 4ecbc78f68 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おさと | 作成日時:2023年8月20日 19時

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