●遠ざかる背中(桃×白) ページ46
しめ×のえる
・こまち様リクエスト
・notリアル設定
・S.tiger【病系短編集】10「夢のかたち」、S.tiger【病系短編集】13「生きる僕らは」の続編です。
Side如恵留
その姿を見たのは、久しぶりだった。
姿といっても、正確には後姿だけ。しかも、見たというよりは一瞬見かけたといった方がいいくらいの、ごくわずかな時間だった。
院内の広い食堂で1人背中を丸めて座る背中に、「しめ」と呼びかける直前に彼のPHSが音を立てて、すぐに立ち上がる。駆け足で食堂を出るその背中は、あっという間に遠ざかっていった。
「……少し、痩せたと思いませんか？」
注文した定食のトレイをテーブルに置いて、席につく。ほとんど昼食を終えていた様子の宮近さんが、水で頬を膨らませたまま顔を上げた。
「珍しい。主語が抜けてますね。」
こちらが不快にならない程度に茶化してくる彼のポップな明るさは、ベテランナースになった今も変わらない。宮近さんはもう一口水を飲んでから、小さく笑って頷いた。
「しめのことですよね。救急は相当ハードだと思いますけど、一生懸命頑張ってるみたいですよ。」
一生懸命、とつぶやく俺を見て、宮近さんは小首を傾げた。
「心配ですか。」
「……まあ、もうすぐ研修も終わりますからね。乗り越えるべきものも、たくさんあるんだとは思いますけど。」
我ながら全くかみ合わない会話を繰り広げているな、と思いながら、箸を手に取る。宮近さんは何か言いたげな顔を見せたけれど、結局彼も緊急の呼び出しによって慌ただしく席を立っていった。
会話が突然中断することも、院内を駆けていく同僚を見送るのも、何も珍しいことじゃない。それなのに、さっきはどうしてあんな胸騒ぎを覚えたのか。
「絶対に小児科医になります。」
ひとまず小児科での研修を終えて、丁寧な挨拶を述べてくれたときの真っすぐなしめの瞳を思い出す。
あのひたむきで真っすぐな志が、完全にぽっきりと折れてしまうような事態に俺が直接立ち会うことはなかった。
それがよかったのか、悪かったのか。ついさっき見た、いくらかほっそりとしたようなしめの背中を思い出しながら、とりとめもなく思いを巡らせていた。
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おさと(プロフ) - もなかさん» もなか様、こんにちは！コメントとっても嬉しいです（ ; ; ）こちらこそ、素敵なリクエストを本当にありがとうございました！！ (9月3日 17時) (
レス) id: e06b49d6d2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - とても素敵なお話をありがとうございました!リクエスト自体初めてであんなざっくりした内容がこんな素敵なお話になるなんて思ってなかったです!キュッとなってホロリとしてホワッと心温まりました。ありがとうございました! (8月30日 22時) (レス) @page14 id: 4ecbc78f68 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おさと | 作成日時：2023年8月20日 19時
