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Side元太
起きてるのか寝てるのか、自分でもよくわかんなくなる時間がだんだん増えてきた。
一日中ベッドにいるだけなのに体はだるくて、いつも少しだけ息苦しい。それならずっと寝ていたいって思うけど、ぐっすり寝ることもなかなかできない。
今日もそんな感じで、ベッドの背もたれを起こしたまま俺は中途半端にウトウトしていた。あ、今なら寝れるかもって思ったところで、バタバタでかい足音が近づいてくる。
「……兄ちゃん？」
足音だけでわかっちゃうなんて、やっぱ兄弟だな。そう思ってちょっと笑ったところで、病室のドアが開いた。
「元太……！」
ハァハァ息をしている兄ちゃんは、鼻も頬っぺたも真っ赤だった。コートも手袋も、マフラーもない。
「風邪引いたら、どーすんの。」
近くで見ると、目も指先も真っ赤だった。パパとママの前では見せないけど、兄ちゃんは実は泣き虫。俺だけが知ってる、兄ちゃんの涙だ。
「元太、元太っ…！」
「なーに(笑)。」
冷たい冷たいってよく言われる俺の手で触っても、兄ちゃんの顔はひんやりしていた。涙をすくう俺の手に、もっと冷たい兄ちゃんの手が重なる。
「兄ちゃん。ちゃんと、寝てる？」
兄ちゃんはうるうるしてる目を泳がせて、頷かなかった。
「ちゃんと、食べてる？」
「……うん、」
「ちゃんと、笑って、る？」
「元太、無理してしゃべんないで。息上がってる。」
わかってる。息が苦しくて、少し辛い。でも、今は兄ちゃんだって同じくらい苦しいんじゃないか。
なんで、病気の人の方が苦しいってみんな思うのかな。健康な人だって、兄ちゃんだって、こんなにしんどい思いしてるのに。
「兄ちゃ、来てくれ、ると、ッハァ、思わな、かった。」
「なんで？俺、元太に会うためだったらどこにでも行くよ？東京にだって、いつでも駆けつける。」
あぁ、やっぱりなって心の中で思って、俺は息を吐いた。パパとママには黙っててって、言ったのにな。
「……移るんだ。東京の、でっかいびょーいん。手術も、そこで、やる。」
東京、と力の抜けた声で、兄ちゃんが繰り返す。
ここから少し遠くて、ここより少し人も建物も多くて。ここより、少し空の狭い場所。
そんな場所に、明日。俺は、行かなくちゃいけないんだ。
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おさと(プロフ) - もなかさん» もなか様、こんにちは！コメントとっても嬉しいです（ ; ; ）こちらこそ、素敵なリクエストを本当にありがとうございました！！ (9月3日 17時) (
レス) id: e06b49d6d2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - とても素敵なお話をありがとうございました!リクエスト自体初めてであんなざっくりした内容がこんな素敵なお話になるなんて思ってなかったです!キュッとなってホロリとしてホワッと心温まりました。ありがとうございました! (8月30日 22時) (レス) @page14 id: 4ecbc78f68 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おさと | 作成日時：2023年8月20日 19時
