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Side宮近
「無理して笑わないで。頼むから、自分の心配してよ……。」
大丈夫と俺が言うより先に、松倉が口を開く。今すぐ泣き出してしまいそうなくらい、その声は細く震えていた。
「さっき、夢見た。昼間、ちゃかが気失っちゃったときの。」
「……そっか。」
ベッドから降りて、床に敷いた布団の上に松倉と並んで座る。
「怖かった?」
「……当たり前じゃん。」
「ごめん。俺、松倉の前で2回もぶっ倒れたもんな。」
「そうだよ、心配させんな、バカっ…!」
松倉はうつむいて、肩を震わせた。こんなに心配して泣いてくれてるのに、俺だけ笑ってごまかそうなんて無茶苦茶だったんだ。
「……なあ、ちゃか。」
「ん?」
「俺がもし、仕事忙しくて体調崩したとしたらさ。『このくらいで忙しいとか言うな』って、俺に言う?」
「言わないよ。そんな、ひどいこと。」
ほとんど反射的にそう言ってから、「あ」と思った。寝る前、俺はこれとそっくりな言葉を言った。自分自身に。
「……人に優しいちゃかは好きだけど、自分に優しくないちゃかは嫌い。」
いじけたみたいに言いながら、松倉は俺の左手の甲をそっと指先で撫でた。点滴をした後貼ってもらった絆創膏は、まだはがさないままだった。
「わかった、ごめん。」
「……明日、ちゃんと休む?」
「休むよ。」
「ほんと?」
「ほんと。……また松倉に『大嫌い』とか言われるの、きついし(笑)。」
俺の言葉に、松倉はきまり悪そうに笑った。言い過ぎたかも、なんて言って肩をすくめる松倉はやっといつもの笑顔を浮かべていて。
別にやることもないのに「今日は徹夜で看病する」って言ってきかない松倉は、一晩中俺の手を握って離してくれなかった。
「大嫌い」fin.
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おさと(プロフ) - もなかさん» もなか様、こんにちは!コメントとっても嬉しいです( ; ; )こちらこそ、素敵なリクエストを本当にありがとうございました!! (9月3日 17時) (レス) id: e06b49d6d2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - とても素敵なお話をありがとうございました!リクエスト自体初めてであんなざっくりした内容がこんな素敵なお話になるなんて思ってなかったです!キュッとなってホロリとしてホワッと心温まりました。ありがとうございました! (8月30日 22時) (レス) @page14 id: 4ecbc78f68 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2023年8月20日 19時