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Side如恵留
どんなに酔っていても、夜が遅くても、帰宅してから最初にすることは決まっている。
「……龍也、ただいま。」
部屋のドアをノックしても返事がなかったから、こっそり中に入ってみれば弟は案の定ぐっすり眠っていた。丸まった体勢で眠る弟のそばに膝をついて、顔にかかる髪をそっと指先で避ける。
よかった、今日も無事に過ごせた。
弟の顔を見てそのことを実感しないと1日を終えられないなんて、海人にでも知られたら「重い！」とまた笑われてしまうだろう。
小さい頃から変わらない、少し口が開いている無防備な寝顔。
この寝顔を見ながら思い出すのは、決まって5年前の夜。事故で急死した両親の葬式を終えた日の夜、泣き疲れて寝てしまった弟の寝顔を一晩中見ていたあの時間だ。
ひたすら、途方に暮れていた。自分は喪服の用意すらできていなかった、形だけ大人の新社会人。中学に上がったばかりの弟と2人で生きていくのは、簡単じゃない。
それでも、決意をした。守らなければならないと思った。病を抱える体に両親を失った悲しみまでも抱えて眠っている、この子を。
「……ん、」
枕元にある腕時計型の心拍計に手を伸ばした時、弟の目がゆっくりと開いた。ただいま、と小さな声で言うと、優し気な形をしたその目が2回まばたきを繰り返す。
「……酒くさぁ、」
鼻をつまむ仕草をして、弟がふんわりと笑う。
「体調はどう？しんどくない？」
「大丈夫だよ。検査も問題なかったじゃん。」
あきれたように笑いながら、俺の眉間を指でつついてくる。
眉間にしわが寄っていることを、ここ最近よく弟に指摘されるようになった。心配が顔に出てしまっているらしい。やっぱり気を遣わせているのかもしれないなと、少し情けなく思った。
「……ねえ、如恵留。俺、ずっと言おうと思ってたんだけど、」
「ん？」
「……もうさ、病院ついてこなくていいよ。俺、もう大人だし、検査サボったりしない。病院までだって1人で行けるし、如恵留がわざわざ休みとることないよ。」
そう言ってにっこり笑う弟の姿は、なぜかひどく遠い所にあるように感じた。
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おさと(プロフ) - もなかさん» もなか様、こんにちは！コメントとっても嬉しいです（ ; ; ）こちらこそ、素敵なリクエストを本当にありがとうございました！！ (9月3日 17時) (
レス) id: e06b49d6d2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - とても素敵なお話をありがとうございました!リクエスト自体初めてであんなざっくりした内容がこんな素敵なお話になるなんて思ってなかったです!キュッとなってホロリとしてホワッと心温まりました。ありがとうございました! (8月30日 22時) (レス) @page14 id: 4ecbc78f68 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おさと | 作成日時：2023年8月20日 19時
