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「本当に、いいんですか？」
病院の外まで見送りに出てきてくれた先生が言う。俺は笑顔をつくって頷いた。
予定通り留学に行くって言ったら、親戚中から怒られたけど。それでもここで立ち止まるのは違うって、俺ははっきりわかっていた。
「……先生。月、見えますね。」
先生の方を見ると、ちょうど真上の青空に白い月が浮かんでいた。俺の視線をたどるように顔を上げた先生が、小さく頷く。
「時々、見えることがありますよね。星なんかは滅多に昼間には見えないけど、月は明るいですから。太陽の光にも負けないんでしょうね。」
「……そう、なんですか。」
その言葉を聞いただけで、俺は無性に泣きたくなった。ぐっとつばを飲み込んで、あふれそうになる色んな感情を体の中に押し込む。
「先生。」
「……はい。」
「ありがとうございました。」
俺の知らない所で苦しんでいた元太を、この人は支えてくれていた。事故にあってからもずっとそばにいてくれたし、もしあの事故がなければ、きっと元太の長い治療にも力を尽くしてくれた。いくら感謝したって足りない。
「体に、気を付けて。」
「……はい。」
顔を上げて、俺は1人で道を歩き出した。
実家に戻って、スーツケースを持って。空港に着く頃には、もう昼をとっくに過ぎていた。
飛行機に乗り込むときになって、大きな機体を前に足がすくむ。本当に行くんだ、1人で。
「……元太。」
空を見上げれば、朝病院を出たときよりほんの少し青が薄くなった空に、かすれたように淡い白色の月が浮かんでいた。
「俺、頑張ってくるよ。」
俺、お前の自慢の兄ちゃんだから。そう、小さく声に出す。
元太の言葉が、記憶が、いつまで俺の背中を押してくれるかはわからない。だけど、どんなに淡くなっても、もしも思い出せなくなる時があったとしても、消えることはないってわかる。
楽しんでくるよ。
そう声に出して、手を空にかざす。オレンジと青色のミサンガが、一緒に日の光を浴びて輝いていた。
「月と太陽」fin.
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おさと(プロフ) - もなかさん» もなか様、こんにちは！コメントとっても嬉しいです（ ; ; ）こちらこそ、素敵なリクエストを本当にありがとうございました！！ (9月3日 17時) (
レス) id: e06b49d6d2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - とても素敵なお話をありがとうございました!リクエスト自体初めてであんなざっくりした内容がこんな素敵なお話になるなんて思ってなかったです!キュッとなってホロリとしてホワッと心温まりました。ありがとうございました! (8月30日 22時) (レス) @page14 id: 4ecbc78f68 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おさと | 作成日時：2023年8月20日 19時
