検索窓
今日:53 hit、昨日:37 hit、合計:34,920 hit

ページ18

先生が買ってきたケーキは、しっかり誕生日らしい丸くて大きめのホールケーキだった。さすがに18本じゃないけれど、ろうそくを立てて部屋の明かりを消す。





「……ろうそくの灯、消す人いねえじゃん。」





ふっと笑うと、ろうそくの灯が小さく揺れた。カーテンは開けているけれど、ろうそくと一緒にこの部屋を明るくしてくれるほど今日の月は明るくない。







俺は立ち上がって、窓枠に手を添えた。細身の三日月が、暗い空でひんやり光っている。





こうして見ると、元太はたしかに月みたいなところもあるのかもしれない。暗い影の部分は見せないで、自分の今の形で精いっぱい輝いている月。









「……でもさ、元太。」





でもやっぱり、太陽なんだよな。俺にとっては、ずっと元太が太陽だった。





他の子と同じように小学校に行けなくても、制限だらけの青春でも。元太は、いつだって精一杯輝いていた。18年。俺の何倍もの、温度と熱量で。





お前、気づいてなかったの?そんなお前の周りに、たくさんの人が引き寄せられていったこと。友達、家族、恋人。いつもいつも、元太の周りは笑顔の人であふれてた。俺なんか兄ちゃんのくせに、お前に励まされてばっかだったよ。









だから、元太、自分を月なんて言うなよ。俺を太陽なんて言うなよ。同じ空で、同じ時間に隣で光れないなんて、そんなの嫌だよ。







「……元太、元太っ、」





いつの間にか位置が低くなってきた月に背を向けて、ベッドに走る。青いミサンガのついた手を取って、自分の顔に当てる。







「嫌だよ、怖いよ。でも、元太はちゃんと前を向いて生きようとしてたから。だから、俺も生きなきゃいけないんだよな?」





だからさ、元太。もう一度、俺をほめて。さすが俺の兄ちゃんって言って、笑って。そうすれば俺、1人でも頑張れるかもしれないから。









そう願っても、元太は動かなかった。23時58分。この言葉はきっと、もう最後になる。







「……元太。誕生日、おめでとう。」

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (62 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
238人がお気に入り
設定タグ:TravisJapan , トラジャ , 病系
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

おさと(プロフ) - もなかさん» もなか様、こんにちは!コメントとっても嬉しいです( ; ; )こちらこそ、素敵なリクエストを本当にありがとうございました!! (9月3日 17時) (レス) id: e06b49d6d2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - とても素敵なお話をありがとうございました!リクエスト自体初めてであんなざっくりした内容がこんな素敵なお話になるなんて思ってなかったです!キュッとなってホロリとしてホワッと心温まりました。ありがとうございました! (8月30日 22時) (レス) @page14 id: 4ecbc78f68 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:おさと | 作成日時:2023年8月20日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。