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両親と弟が事故に遭ったと連絡が来たとき、俺は部屋の片づけをしていた。近づいてきたアメリカ留学に備えて、必要ないものは思い切って捨てちゃおうなんて、浮かれた気分の断捨離だった。
1人暮らしをしていた大学近くのアパートから、実家近くの大学病院まで。連絡を受けてから、急いで、急ぎきれないほどに急いだけれど、両親の最期には間に合わなかった。
待っていたのは、元太１人だった。口から管を入れられて少しも動かない、変わり果てた姿で。
"向こう行く前にさ、家帰ってくる？”
“帰るよ、来月の19日”
だって元太の誕生日じゃん、パーティーやんなきゃ。
元太が急に俺の部屋に来て、ミサンガをくれたあの日。俺がそう言ったときの、元太の笑顔はちょっと大げさなくらい幸せそうだった。
マジ？約束だからな、絶対だぞ。そう、言ったくせに。
「……お前の方が約束破ってんじゃねえよ、バカ。」
バカ、元太のバカ。何回繰り返しても、目の前の元太は怒りもしない。
握り返されることのない手を握ってベッドに突っ伏すと、後ろから遠慮がちに声をかけられた。
「松倉さん？」
大丈夫ですか？と目の前に白衣の先生がしゃがむ。元太をみてくれている先生だ。
あぁ、川島先生っていうんだ。目の前で揺れるネームプレートを見て、ぼんやりと思う。
「……かわいいですね、それ。」
「え？」
声を出すのも億劫で、俺は黙って先生の胸ポケットのあたりを指さした。ボールペンの頭についた猫のキャラクターが、ひょっこり顔を出して笑っている。
「……あぁ、これですか？僕は小児科の医師なので、こういうのは何かと重宝するんです。」
先生の言葉に、一瞬光が差すような小さい違和感を覚えたけれど、それはすぐに懐かしさにかき消された。
ぬいぐるみとかを使いながら、優しく子供たちに接してるお医者さんたちの姿は今でも思い出せる。懐かしいな、と思わず声が出た。
「……元太は、誕生日が大好きなんです。」
「え？」
「実は元太、小さい頃に病気にかかって。ちょっと、大人になれるのかもわかんないような大きい病気。だからなのかな。病気が治った後も、すげえ大事にしてたんです。自分の誕生日も、他人の誕生日も。」
だから、先生。俺、ちゃんと元太との約束守ってやりたいです。
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おさと(プロフ) - もなかさん» もなか様、こんにちは！コメントとっても嬉しいです（ ; ; ）こちらこそ、素敵なリクエストを本当にありがとうございました！！ (9月3日 17時) (
レス) id: e06b49d6d2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - とても素敵なお話をありがとうございました!リクエスト自体初めてであんなざっくりした内容がこんな素敵なお話になるなんて思ってなかったです!キュッとなってホロリとしてホワッと心温まりました。ありがとうございました! (8月30日 22時) (レス) @page14 id: 4ecbc78f68 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おさと | 作成日時：2023年8月20日 19時
