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Side松倉
「違う！待って、そういうことじゃない！」
俺が慌てて叫ぶと、ちゃかは片手で頭を押さえながら息を吐いた。
「……大丈夫、わかってる。お前、よく考えないまましゃべり出すときあるもんな。」
「マジでごめん……。」
俺は深呼吸をしてから、今度は慎重に口を開いた。今までちゃかと一緒にいた時間、しずの言葉。色んなものをなぞりながら、ゆっくり声を出す。
「……ちゃか、覚えてる？入学式の日、俺が学校行きたくないって言ったの。」
「ん？……あぁ、うん。あったかもね、そういうこと。」
「俺、あの時どうしても恥ずかしかったんだ。普通はみんな新品の靴はいていくのに、俺だけ3年間使い込んだおさがりの靴で。洗っても洗っても、やっぱり汚れが落ちないんだよな。真っ白な靴の中で、1人だけ灰色の汚い靴。今はみんなそれなりに汚いし気になんないけど、あの時はすげえ恥ずかしくてさ。」
ちゃかは伏し目がちになって、淡く笑った。こういうときのちゃかの顔は子供のくせに大人っぽくて、ちょっと綺麗だ。
「……で、その時ちゃか言ったんだよ。何がそんなに嫌なんだって。俺が『馬鹿にされるから』って答えたら、そんなの鼻で笑えよってちゃかが言うんだよ。どんだけ繕っても、俺らみたいな人間をどうしても可哀そうな人間に仕立て上げたいやつらはいるって。どうせ粗探しされるんだから、堂々としてようぜって。」
かっけえなって、思った。強いやつだなって思ったんだよ、俺は。
「ちゃかは、十分強いから。これ以上頑張んなくてもいいって、俺は正直思う。……でも、ちゃかが頑張りたいって言うなら、俺は応援するよ。」
「……ほんと？」
「うん。……本当は、ちょっと嫌だけど。」
え？と、ちゃかが苦笑いで聞き返してくる。
「……だって、ちゃかがしんどい思いするのは嫌だもん。」
ちゃかは照れくさそうに笑うと、静かにベンチから立ち上がった。黒い髪の先から雫が落ちる。
「俺、ずっとちゃかのそばにいるから。変われても変われなくても、一緒にいる。」
だってちゃかのこと好きだし、なんて言いながらちゃかの顔を覗くと、その顔は少し赤くなってて。逃げるように歩きだしたちゃかを追いかける。
汚れたボロボロの靴が４つ、泥を跳ね返しながら並んで一歩を踏み出した。
「俺たちの一歩」fin.
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おさと(プロフ) - もなかさん» もなか様、こんにちは！コメントとっても嬉しいです（ ; ; ）こちらこそ、素敵なリクエストを本当にありがとうございました！！ (9月3日 17時) (
レス) id: e06b49d6d2 (このIDを非表示/違反報告)
もなか(プロフ) - とても素敵なお話をありがとうございました!リクエスト自体初めてであんなざっくりした内容がこんな素敵なお話になるなんて思ってなかったです!キュッとなってホロリとしてホワッと心温まりました。ありがとうございました! (8月30日 22時) (レス) @page14 id: 4ecbc78f68 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おさと | 作成日時：2023年8月20日 19時
