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「今日は、Aちゃんのこと甘やかすって決めてるから。」



「そうなの、?(笑)」



「うん。なんでも言うとおりにするよ。帰れって言われたら、帰るし。」





いかがいたしましょうか、お嬢様、と冗談めかして続ける如恵留くんがおかしくて、私はひさしぶりに笑った。今日だって、昼間は笑っていたはずなのに、ものすごく久しぶりに笑った気がした。







「…じゃあ、何か癒される話が聞きたい。」



「お、無茶ぶりが来たな(笑)。」





あごに手を当てながら、如恵留くんはしばらく考え込むような顔をしていた。それから、おもむろにスマホを取り出す。





「話ではないけど、癒される動画をお見せしましょう。」





少し自慢げな様子で見せてくれたのは、如恵留くんの家の飼い猫ちゃんたちの動画だった。無防備に寝そべった状態でゴロゴロと喉を鳴らす様子がかわいくて、思わず頬が緩む。







「これは、たしかに癒される。」



「でしょ?猫のゴロゴロ音って、そういう効果があるらしいよ。」



「そうなの?」



「うん。なんか、骨折の直りが早くなるとか。まあ、どこまで本当かわからないけど。」



「そうなんだ…!」





私が感心していると、如恵留くんもスマホを見ながらにこにこと頷いた。その横顔を見ながら、私はしみじみとつぶやく。





「如恵留くんと、一緒だね。」



「え?」



「さっきね、如恵留くんの声を聞いてすごく安心したの。不思議なくらい。如恵留くんの声聞いたら、本当に怪我も治っちゃうのかも。」



「…本当?」









じゃあ、Aちゃんの痛みは全部俺が引き受けるよ。







その声は、真剣そのものだった。





穏やかだけれど、強い目。その目をじっと見ているうちに、私はなぜか泣きたい気持ちになっていた。

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作者名:おさと | 作成日時:2023年4月16日 19時

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