いまを春べと（2） (ページ3)

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如恵留くんの家に着くと、みんな嬉しそうに私を迎えてくれた。

張り切って作りすぎたという豪勢な料理をお腹いっぱいになるまで頬張ったり、おなじみの年末特番を見ながらおしゃべりをしたりするうちに、時間はあっという間に流れていった。

お風呂をいただいてリビングに戻ると、ちょうど日付が変わったところだった。おじさんとおばさん、如恵留くんと口々に「あけましておめでとうございます」の挨拶を交わしてから、いつも泊まらせてもらっている部屋に入る。

信じられないほど肌触りのいい客用の布団に横たわってスマホを見ると、1件の不在着信があった。20分くらい前にきていた着信の名前を画面に呼び出しながら、上着を羽織って部屋を出る。

『Aちゃん、あけましておめでとう。』

何度目かの呼び出し音の後、その声が聞こえたのはちょうどベランダに出た時だった。夜風の冷たさに体を縮こまらせながら、スマホを持ち直す。

「あけましておめでとう。起きてたの？」

『やっぱり年越しのときは起きてたいじゃん。それに、Aちゃんに早くあけましておめでとうって言いたかったから。』

そう言う七五三掛さんの声は、夜なのに弾んでいた。想像していたよりは元気そうな声に、ほっと胸をなでおろす。

「体調は、どう？」

『うん、大丈夫だよ。ごめんね、昨日から少し、風邪気味で。』

それから丁寧にお見舞いのお礼を言い始めた七五三掛さんの声は、時々不自然に途切れるようになった。ふーっと息を吐く音が聞こえて、やっと彼が息切れを起こしていることに気づく。

「大丈夫？苦しい？」

『…大丈夫。ごめんね。』

「今日はもう、休んだ方がいいよ。」

『……うん。』

七五三掛さんはもう一度謝ると、電話を切った。通話終了の文字を見てから、今年もよろしくと言いそびれたことに気づく。

その時、すぐ後ろでガラス戸の開く音がした。