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有明の ページ17

大学生活も2年目に入ると、日々の生活は慌ただしさを増した。





大学の授業はいよいよ専門的になってきて、課題にもだいぶ時間を割くようになる。去年の後半から始めた家庭教師のアルバイトも、準備の時間を含めれば結構な重労働だ。









すっきりと晴れていかにもお出かけ日和、といった感じのこの日も、私はいつものカフェにこもって、課題のレポートに追われていた。







「Aちゃん、忙しそうだね。」



「うん。ちょっと、レポートの締切りが近くて。」



「そっか。コーヒー、いつものでいい?」





私が頷くと、慣れた柔軟剤の匂いが遠ざかる。大学図書館で取り寄せた貴重書のコピーをめくる手を止めて、私はようやく顔を上げた。







「…龍也くん、」





小さな声で名前を呼んでみても、届くはずがない。いつもより混んでいる店内で、彼は忙しそうに立ち働いていた。





今日はお客さんが多いな、と店内を見回しながら、今までそれに気づかなかった自分に驚く。ここに来てから、私は彼の目もちゃんと見ていなかったのかもしれない。







気づけば、このカフェに初めて来たあの日から1年以上が経った。店員さんと呼んでいた人と恋人になって、今となっては下の名前で呼ぶことにも少しは慣れてきたし、注文だって「いつもの」で通じてしまう。





たった1年でこんなにも状況が変わるんだとしみじみ驚きながら、私はまた手元の資料に目を落とした。











「…お待たせしました。」





しばらくして聞こえた声に、私は顔を上げた。ノートパソコンと資料を往復していた視線をずらした瞬間、テーブルにこぼれた茶色い液体が目に飛び込んでくる。







「…っ、ごめん。布巾、持ってくるから。」





大丈夫だよ、と声をかけようとした時、あまりに彼の顔色が悪いことに気づいて思わず息をのむ。反射的に、その手をつかんで引き留めた。

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作者名:おさと | 作成日時:2023年4月16日 19時

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