「とっくに欲張ってたんだね」 ページ44
Side如恵留
おすわり！まて！
全部ひらがなにしたくなるような、無邪気な声が撮影スタジオに響いている。思わず頬が緩むような光景は、俺が動くより先にインスタリーダーがカメラに収めていた。
「ねえ、これ絶対俺のこと忘れちゃったよね？全然会ってなかったからかなー…。」
するっと逃げるようにそばを離れた犬の後姿を見つめながら、しめが悲しそうに言う。でも、眉を下げている割には頬の筋肉が楽しそうに上がっていた。
「最初っからしめのこと好きじゃなかったんじゃね？」
「はあ！？」
松倉の軽口に、しめが拳をかざすフリをする。怖い怖い、なんて棒読みの台詞を残して、松倉も犬と同じようにしめから逃げていった。
「……楽しそうじゃん(笑)。」
「楽しい……けど、やっぱ忘れられたのかな〜。」
雑誌の撮影でおなじみのワンちゃんを、しめは未練がましく目で追っていた。意外と気にしてるんだと思うと、寂しげな横顔が健気に見えてくる。
「これからいっぱい遊べばいいよ。」
最近調子よさそうだし、と付け足すと、しめはやっと明るい笑顔を見せてくれた。
「ほんと、輸血してからマジで調子いい！めまいもしないし、息も切れないし！」
最近見た中で一番血色のいい顔を上に向けて、しめが思い切り伸びをする。んーっと気持ちよさそうな声を上げた後、「あ」とこぼした声はたった一音でもはっきりと弾んでいるのがわかった。
「……俺、明日行ってみようかな。」
「え？」
「事務所でやる、ダンスレッスン。」
「……は！？」
「いや、待って。俺踊んないよ？見るだけ！」
にこにこ顔のしめを見ながら、俺は呆気に取られていた。でも、その一方で頭がフル回転を始めるのが分かる。ちょうどよくしめが撮影に呼ばれていくのを見送った後、俺は手持ちのカメラをチェックしている松倉に駆け寄った。
「松倉、明日レッスン出る予定だったよね？」
「え？……うん、そうだけど。」
「悪いけど、しめのこと見ててやってくれる？見学だけしたいって言ってるんだけど……。」
「……まさか、踊る気？」
「いや、多分それはない。結構自重するタイプだし、しめ的にもまた調子崩すのが一番怖いと思うから。」
じゃあなんで？とでも言いたげに、松倉が首を傾げる。俺はカメラに笑顔を向けるしめを一瞥して、口を開いた。
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おさと(プロフ) - 七桃さん» 七桃様、コメントありがとうございます！そう言っていただけて、とっても嬉しいです😭これからもお楽しみいただけるように頑張ります！ (6月20日 20時) (
レス) id: de6645fa3a (このIDを非表示/違反報告)
七桃(プロフ) - 短編集の時からおさとさんの小説読んでて、ほんとに好みすぎます……♡笑 これからも楽しみにしています！ (6月18日 23時) (レス) @page7 id: 224ce8b2d8 (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - はなさん» はな様、コメントありがとうございます！貴重なご意見もお寄せくださり、ありがとうございました😊亀更新ですが、引き続きお付き合いいただけると嬉しいです！！ (6月13日 7時) (レス) id: de6645fa3a (このIDを非表示/違反報告)
はな - こんばんは😊お話楽しみにしてます！ (6月11日 22時) (レス) id: 1e8df6407a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おさと | 作成日時：2023年6月11日 21時
