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「元太。そっちにビニール袋あるから、しめに渡して。」
ちょっと早口なマネージャーの声が、運転席から聞こえてくる。俺は三角に畳んである袋をつかんで、急いで隣のしめに渡した。
「……気持ち悪い？」
しめはイエスもノーも言わなかったけど、最悪な顔色を見ればどっちが答えかなんて簡単にわかる。
いつもなら車の中で爆睡したりできるんだけど、こんなにしんどそうな人が隣にいてそんなことできるわけなかった。ハァハァいってる息の音を聞いてるだけで俺までしんどくなって、無駄にハラハラしている間に車は病院の駐車場に入っていった。
裏口っぽい所に移動すると、車いすを押した看護師さんが出てくる。車いすなんかリアルで見ることもほとんどないし、これにしめが乗るんだって思ったら体の奥がひんやり冷たくなるような気がした。
「……元太、」
グラグラしてる体を支えられながら車を降りたしめに、小っちゃい声で呼ばれる。
「ごめんね。」
かっすかすの声を聞いた瞬間、あぁ、優しいなって、ぼんやり思った。歩けないくらい具合が悪くても、ちゃんと優しい。だから俺も、優しいことを言いたかった。
でも、言えなかった。
いいよ、大丈夫だよ。お大事に。ゆっくり休んで。
それっぽい優しい感じの台詞は何個か思いつくのに、それを選んで声に出す余裕が今の俺にはなかった。
俺が黙っている間に、しめは車いすに座らされて病院の中に入っていった。移動車の窓越しに、しめの小っちゃな後姿を見送る。
「元太、ごめん。時間ギリギリになっちゃったけど、ここから次の現場近いから。」
「……あぁ、うん。」
スマホをチェックすると、たしかに次の撮影の時間まであんまり時間がない。でも、あと10分くらいなら寝られるかも。
スマホをポケットにつっこんで、目をつぶる。
あぁ、やっと寝れる。
一瞬だけど、俺ははっきりそう思った。ありえない。優しさの欠片もない自分が、吐きそうなほど嫌だった。
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おさと(プロフ) - 七桃さん» 七桃様、コメントありがとうございます！そう言っていただけて、とっても嬉しいです😭これからもお楽しみいただけるように頑張ります！ (6月20日 20時) (
レス) id: de6645fa3a (このIDを非表示/違反報告)
七桃(プロフ) - 短編集の時からおさとさんの小説読んでて、ほんとに好みすぎます……♡笑 これからも楽しみにしています！ (6月18日 23時) (レス) @page7 id: 224ce8b2d8 (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - はなさん» はな様、コメントありがとうございます！貴重なご意見もお寄せくださり、ありがとうございました😊亀更新ですが、引き続きお付き合いいただけると嬉しいです！！ (6月13日 7時) (レス) id: de6645fa3a (このIDを非表示/違反報告)
はな - こんばんは😊お話楽しみにしてます！ (6月11日 22時) (レス) id: 1e8df6407a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おさと | 作成日時：2023年6月11日 21時
