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「……悪かったって、思ってるよ。」
俺と海人、2人きりの車内。珍しく寝ることもスマホを見ることもしていなかった海人が、独り言のようにつぶやいた。
「ほんとはさ、しめの言う通りだと思うよ。急に病気なったらとか、想像すんの無理だもん。俺がもし同じことになったら、あれの数倍荒れるのかもしんないし、そうでもないのかもしんない。何もわかんねえよ、正直。普通はそれでいいよ。俺にはわかんねえなって、そのまま諦める。でも、」
でも、の続きは出てこなかった。苦しそうに眉間にしわを寄せて、海人はタクシーの窓ガラスに額をぶつけた。
「……しめのことだもんね。諦めたく、ないよね。」
コン、と海人がまた頭を窓にぶつける。
「悔しいよね。わかりたいのにわかれないのは、苦しい。」
でも無駄じゃないからね、と言った俺の声に返事をする代わりに、海人はキャップを目深にかぶってうつむいた。
それからは無言で、俺たちはそれぞれ窓から流れていく景色を眺めていた。
タクシーが事務所の近くに来たところで、それに気づいた海人がようやく声を上げる。
「……あれ、如恵留くん家帰んないの？」
「うん、ちょっと寄りたい用事があって。」
無理しないでよ、と言う海人の目が心配そうに揺れる。しめにもこのくらいストレートに優しさを表せればいいのにと思うけれど、それぞれ築いてきた関係性は違う。
だからこれでいいんだと、俺は思う。
俺は、いつも以上に重みのある「また明日」を海人に言うと、タクシーを降りて事務所の中に入った。
「……やっぱり、ここにいた。」
飽きるほど見てきた、後ろ姿。
今は丸まっているその背中は、予想通りここで俺を待っていた。
「如恵留、？」
俺の声で、しめが恐る恐る振り向く。貧血のせいでどうしたって顔色は優れないのに、心まで傷ついたしめの顔は見ていられないほど痛々しかった。
「……如恵留、俺っ、」
勢いよく立ち上がったしめを見て、俺は反射的に駆け寄りそうになった。でも、一歩目を踏み出した瞬間腰にはしった痛みに、その動きはあっけなく阻まれることになった。
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おさと(プロフ) - 七桃さん» 七桃様、コメントありがとうございます！そう言っていただけて、とっても嬉しいです😭これからもお楽しみいただけるように頑張ります！ (6月20日 20時) (
レス) id: de6645fa3a (このIDを非表示/違反報告)
七桃(プロフ) - 短編集の時からおさとさんの小説読んでて、ほんとに好みすぎます……♡笑 これからも楽しみにしています！ (6月18日 23時) (レス) @page7 id: 224ce8b2d8 (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - はなさん» はな様、コメントありがとうございます！貴重なご意見もお寄せくださり、ありがとうございました😊亀更新ですが、引き続きお付き合いいただけると嬉しいです！！ (6月13日 7時) (レス) id: de6645fa3a (このIDを非表示/違反報告)
はな - こんばんは😊お話楽しみにしてます！ (6月11日 22時) (レス) id: 1e8df6407a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おさと | 作成日時：2023年6月11日 21時
