夜目 ページ14
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それからAは救急箱を持ってきて、俺の正面に座った。
「………」
「ほらっ、そっぽ向かないの〜!」
ぐっと頬を挟まれ、顔の向きを強制的に変えさせられる。
…こういうところ、あの婆みたいだな。
「私ね、手当ては得意なの」
「…得意?」
「うん、よく炭治郎とかが怪我してたから」
『炭治郎』、その名前がAから出てきただけなのに、何故か胸がズキリと傷んだ。
……?
胸に攻撃は喰らってない筈なのにな。
「…はいっ、じゃあ後は顔の怪我だけね」
絆創膏とガーゼを手に持ったAの顔が、目の前まで近づく。
「ぅおっ」
「……なに?」
こてんと首を傾げるA。
……おかしい、胸の鼓動がさっきより格段に速くなっている。
「…な、なんでもねぇ」
「あ!もしかして傷が痛むの?
早く消毒してなかったから体の中にバイ菌が入ってるのかも」
「お、おう…そうか」
…何でコイツと一緒に居ると、調子狂わされるんだ?
.
.
.
「はい、お疲れ様」
「…おう」
ふと窓の外に目線を向けると、……嵐かってくらい天気が荒れていた。
「うわあ…これは、帰れないねえ」
「…いや、帰るしかねえだろ」
「へ、」
そう言って立ち上がると、Aはきょとんとした顔で俺のことを見つめてきた。
「…帰っちゃうの?」
「…?駄目なのか?」
「だ、だって、」
ピシャアアアアン!!!
窓の外が光った。
「うおっ」
「ひゃあっ!?」
部屋の電気が消え、真っ暗になる。
甲高い悲鳴が聞こえたと思えば、右腕にぎゅっと何かがしがみついてきた。
「…?A、か?」
「い、伊之助ぇ」
森で過ごしてる時のことが役に立った。
俺は夜目がきくため、暗闇でもAの顔が見ることができた。
「…雷、こわ、い」
涙目で、ひしと俺に抱きついてくるAの顔が。
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雪 - 天才じゃん!伊之助愛ラブの私からすると神作品以上だわ。 (2022年5月24日 23時) (レス) @page29 id: 8b8f592efb (このIDを非表示/違反報告)
都(プロフ) - 完結おめでとうございます!大好きな作品だったので本当に楽しみながら読んでました…!これからも体調等崩さずに頑張ってください┏〇゛ (2020年3月16日 9時) (レス) id: b440812837 (このIDを非表示/違反報告)
佐藤もあ(プロフ) - はなさん» ありがとうございます!頑張ります! (2020年3月8日 13時) (レス) id: 6a67217fdd (このIDを非表示/違反報告)
はな - 続き楽しみにしてます!更新頑張ってください! (2020年3月7日 17時) (レス) id: e71ef0b1ca (このIDを非表示/違反報告)
佐藤もあ(プロフ) - 素良さん» ありがとうございます!ちょこちょこ書き進めていくので楽しみにしてもらえたら嬉しいです…! (2020年3月5日 20時) (レス) id: 6a67217fdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佐藤もあ | 作成日時:2020年3月3日 18時