不器用なだけ3 ページ8
きらきらと色めく街を抜けて辺りが静かになる
バイクで切る夏の夜風が気持ちいい。
A「ねぇ、洋平。」
洋「ん?どうした?」
A「どこに向かってるの?」
洋「着いてからのお楽しみだって言ったろ?もうすぐ着くから楽しみにしとけ。」
洋平の大きい背中に頬をくっつけてぎゅっと少しだけ抱きつく腕を強めた。
このまま、この時間が永遠に続けばいいとさえ思った。
洋「A、着いたぜ。」
A「ここって…。」
洋平と私が恋人になった場所。彼が告白してくれた浜辺だった。
静かな波の音、柔らかい砂浜、全てがあの時を思い出させてくれた。
洋平がどかっと座った横に座り込み、2人で海を眺める。
洋「…なぁ、A。」
A「ん?」
洋「あの時俺がAに言ったこと、覚えてるか?」
A「…うん。覚えてるよ。」
洋「俺はさ、あん時伝えた事と気持ち変わってねぇし、この先も変わる事ねぇから。」
A「…洋平。」
洋「きっと繊細なお前の事だから、親父さんに反対され続けたらこの関係が崩れちまうとでも思ってたんだろ?」
いたずらっ子のような笑みを浮かべこちらを見てくる。
図星すぎて、黙って頷くことしかできない。
洋「お前が思ってる程、俺はお利口じゃねぇからなあー。諦め悪くてそのうち呆れられると思うぜ。」
A「私は…その…ずっと…、」
洋「おっと、皆まで言うな。その先は俺から伝えさせてくれよ。」
人差し指を口に当てられ頰が熱くなる。
洋「そろそろ帰ろうぜ?な?」
A「…うん。」
そういってバイクに乗る。走りながら"俺、今日こそ親父さんにボコボコにされんのかな。"なんて笑ってる洋平にちょっとムッとなった。
無事家に着くと母が半分泣きそうな顔で私を抱きしめ洋平にお礼を言った。
そして…父は
洋「夜分遅くまで連れ回してすみませんでした。」
深く頭を下げる彼。
父「…水戸、洋平くんと言ったかな。」
洋「あ、はいっ!」
父「…無事に娘を連れて帰って来てくれてありがとう。そして…その、今まで…す、すまなかったな。」
洋「親父さん…。」
父「私は君を誤解していた。Aが飛び出した後、母さんから君の話を聞いて…。Aを学校に行けるようにしてくれたのも、Aが最近楽しそうにしているのも君が手助けしてくれてるからだと…。」
洋平「いえ、そんな。俺はなんもしてないっすよ。Aさんの努力が実ったんすよ。」
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作者名:さちまる | 作成日時:2022年3月23日 4時