【実況者】恋愛恐怖症3【ky】

Part120 ページ25

ーー切り抜きチャンネルは他の人に任せて、私は自分の実況に専念する、という提案をする兄。




『でも…』
私の要領の悪さのせいで、私が受け持った仕事を他の人に投げるなんて。



『それなら実況チャンネルを離れるよ。切り抜きは私が受けた仕事で、実況は私が個人で始めたことなんだから。どっちを優先させるかなんて決まってるよ。』




「お前なあ、」
兄が呆れたようにため息をついてからコツンと私の頭を軽く小突く。




「切り抜きチャンネルは他の人でも運営できるけど、Aの実況チャンネルはAにしかできない。お前のチャンネルの動画を楽しみにしてくれてる人達が今や沢山いるだろ。仕事とか趣味とかそういう問題じゃねぇし、どっちのチャンネルも残せる形があるんだからそっちにすればいい。」




兄の言葉を受け、私は考える。
どちらのチャンネルも残せる方法か…。



「切り抜き頼もうと思ってる人はその道のプロなんだし、快く引き受けてくれてるから申し訳ないとか考えなくていいの。大事なのは自分の身体。あとはファンの人たちが今後どうなることを望んでるかでしょ。」




ファンがどうなる事を望んでいるか…。
私はぼんやり考えながらSNSを開く。
観ると切り抜きチャンネルの心配よりも、わたし自身を心配する声の方が多いように思えた。




無断で投稿をお休みしたというのに。
この人たちは私の実況チャンネルの心配もしてくれている。





『自分が受けた仕事なのに、いいのかな。自分のチャンネルを優先して…。』
「Aにしかできないことを優先な。」
ぼんやりと呟く私の頬を軽くつねりながら笑う兄。




『い、いひゃい…やめ「(ｶﾞﾗｯ!)Aちゃん〜！」




兄の地味な攻撃に悶えていると、病室のドアが開く音と共に控えめな私を呼ぶ声が聞こえる。
見るとレトルトさんが半泣きの状態でこちらへ駆け寄ってきていた。後ろにはキヨさんとガッチさんもいる。




「も〜ほんとやめて心配したでしょうが〜！」
私の両手を握りブンブンと上下に揺するレトルトさん。




『ほんとにすみません。皆さんにもご迷惑をかけてしまって…』
3人に向けて頭を下げる。
「回復したみたいでよかったよ〜」とガッチさんは笑っていたけれど、キヨさんは険しい顔をしていた。




「なんつー顔してんだキヨ。」
兄がツッコミを入れるが、キヨさんは視線を一点に集中させながら「いま泣きそうだからやめて」と呟いていたから思わず微笑んでしまった。

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