【実況者】恋愛恐怖症3【ky】

Part109 ページ14

フジさんAちゃん聞いたよ〜!とわぽん主催のコラボに参加してくれるんだね。




初コラボ動画の反響もそこそこに、もう1つ控えているコラボの収録が数時間後に迫っていた。
LEVEL5で顔見知りになったtowacoさんに誘っていただいた宇宙人狼ゲームのコラボである。


メンバーは私を含めて10人。私以外は全員男性だ。
今こうして連絡をくれたフジさんと、最俺ハウスにお邪魔した時に仲良くさせてもらったヒラさんの2人以外は会話もしたことがない。



今日まで何度も出演を辞退しようと言う気持ちがよぎったけれど、すぐにその気持ちをかき消してきた。
私が苦手なのは恋愛だ。男性じゃない。
「男性との関わりが苦手」と言って壁を作っていては、いつまでも活動の幅は広げられない。



もちろん私は、今ひとりでしている実況と
4人の切り抜きチャンネルの運営だけでも充分充実した毎日を送っている。
それでも、いつまでも苦手意識を理由に
逃げなくてもいい事からも逃げたくはないと思っていた。



A恐縮ながらお誘い頂きました。知らない人だらけなので頼ってしまうこともあるかもしれませんが宜しくお願いします。




『…堅いなぁ。』
我ながら学校の先生にでも送るかのような文章だ。
今更フランクに接する勇気は毛頭ないけれど
もう少しくだけた話し方ができれば、向こうも気を遣わないんだろうな、とも思う。
今日はなるべく皆さんに気を遣わせないようにしないと。



元々コミュニケーションが得意な方ではないけれど
学生時代はバイトで接客もしてきたし、表向きだけでもにこやかに話せるはずだ。
そうだ、仕事。仕事だと思えばいい。



ふと、スマホの着信音がなる。
着信画面をみてみると、兄からだった。



『はい、どうしたの？』
「towacoから聞いた。コラボすんだろ。」
どうやら今回のコラボのことをtowacoさんから聞いたようだ。
心配をかけると思って、収録が終わるまでは言わないようにしていたけど。




『…私なら大丈夫だよ。いい機会だし。これは私にとっては仕事だし、仕事は割り切って』
「楽しめよ。」
私の言葉を遮るようにそう言う兄。




「関わりが、とかそういうの忘れて、Aはゲームを楽しんでればいい。ゲーム実況は本来そうだし。」
ゲームを楽しむ。そんな思考は微塵もなかった。
兄の言葉で狭まっていた視野が、少し広くなった気がした。




『…ありがとうお兄ちゃん。』





何だかんだ兄は優しい。

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