184.(side T.O) ページ37
「……なんでそんな事言うてくれんの？」
「僕が言うのはおかしいかもしれませんけど…僕、応援してますよ。もうずっと大倉さんが忙しい合間を縫って会いに行ってるのも見てきましたから」
「……なんか、あれやな…まぁ、ありがとう」
そんな風に言ってもらえるとこそばゆくはあるけど、素直に嬉しくて。
ほんまにAが戻って来たら、一回くらいAの料理振る舞ったってもええかなと、別に俺が作るわけちゃうけど、勝手に思う。
「わかったなら、早く電話してください」
「え？今？」
「今です。気になって寝れませんよ」
「…なんで上からやねん」
さっきの小言からの勢いが止まらんのか、今日の小林くんは随分と強気で。
バックミラーに映る目が俺にえらい圧をかけてくる。
どっちにしろ明日行くって確認の電話を後でするつもりやったし、手にしたスマホでAに電話を掛けた。
せやけどやっぱりAは出ぇへん。
呼び出し音が延々と聞こえてくる。
諦めて切ろうと思ったところで、しばらくぶりに、通話時間が動き出した。
「…A？」
でも電話の向こうはなんの反応もない。
もう一度呼び掛けた。
「……Aならトイレ」
やっと声がしたと思ったらそれはAやなくて、聞いた事あるような男の声。
やっと繋がったと思ったのに。もう絶対アイツやん。
その声を聞いた瞬間にイラッとしたんやけど、最初からケンカ腰は良くないと、抑えるように深呼吸。
「Aならトイレ行ってるけど、何？」
「何？って……なんでおまえが電話に出とんねん」
いくら幼馴染で兄妹気取っとっても勝手に電話に出るんはアカンやろ。
しかも視線を落とした腕時計の針は22時を回っとる。
「こんな時間にAと何しとんねん」
「別に飲んでるだけ。アンタこそ深夜に密会してるじゃん」
「せやから自分関係ないやろ！」
「言っておくけど、アンタよりAとの付き合い長いし、関係あるだろ」
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年8月16日 20時
