155.(side T.O) ページ7
Aと別れてから、1人の部屋が耐えられなくて、散々飲んで潰れて誤魔化すような生活もしてたけど。
さすがにいつまでもそんな事ばっかしてられへん。
マルちゃんにも言われてもうたし、気を付けてたんやけどな。
「なぁ、」
「んん?」
「ヤスは彼女とうまいこと行ってんの?」
実はヤスには結構長い事付き合うてる彼女がおったりする。
大変な時にもずっと支えてくれたってめっちゃ大事にしとるし、いずれは結婚したいとまで言うとった。
突然の俺の質問に、ヤスは優しく微笑んだ。
その顔がとにかく幸せそうで、今の俺とはまるで正反対で。
少しだけ羨ましく思ってしまう。
「おん。こないだ指輪買うた」
「そうなん?ほんまに結婚するん?」
「まぁ、今は無理やろなって思っとるで?でも、ただそういう気持ちでおるってちゃんと伝えておこうと思て」
「…ヤスの彼女は幸せやな」
一回だけ会うた事あるけど、ヤスと同じくらいのサイズのニコニコ笑う可愛い子やった。
ええな。俺はAの事、最後は泣かせてばっかりやったから。
広がる虚しさを誤魔化すようにグラスに手を伸ばす。
溶け出した氷がからんと音を立てた。
「大倉は?」
「…別れたの知ってるやろ」
「んー?そうやけど、そうやないやろ?さっきもでっかい溜息ついてたやん。Aちゃんのこと、なんかあったんちゃうの?」
当たり前のように言うヤスに少しだけ驚いた。
そうやけど、そうやないやろ?の意味はちょっとわからんけど。
溜息の理由なんていくらでもあるわけで。それやのになんでわかってもうたんやろ。
メンバーってほんまに凄いと思うわ。
仕事中は集中しとるしバレてへんと思ってたんやけどな。
けどどうせバレてるんやったら、この際全部言うてしまおうか。
アルコールのせいにして全部吐き出したら、少しは気持ちも楽になるんかな。
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作者名:咲菜 | 作成日時:2022年8月16日 20時