147.(side T.O) ページ48
気付けばいつの間にかテーブルいっぱいに並ぶ料理。
こんなにたくさんどう考えても2人で食べ切れへんくらい並んでる。
「作り過ぎちゃった」
「ほんまやで。太るやんか」
「ごめんごめん。無理に食べないでね？残したら明日も食べれるし」
「もー、食べ納めもさせてくれへんの？」
ごめんてば、Aがもう一度そう言ってから、小さく笑った。
明日1人で残ったもの食べたら、泣いてまうんやろな。
きっとしばらくは、俺も涙腺故障しっ放しや。
「…乾杯しよか」
まだ残ってるワインをグラスに注ぐ。
ありがと、Aが微笑んで、小さくグラスが音を立てた。
Aはそれを少しだけ口に含んだ後、すぐにグラスをテーブルに置いた。
それからじっと俺を見て、美味しい？て首を傾げるから。
「うん。めっちゃ美味い」
素直に返せば、こぼれ落ちる満面の笑みが俺の心をぎゅっと鷲掴みにする。
「忠義くんの美味しそうに食べてる顔、好き」
しかもそんな事まで言うて。ほんまにもう…いなくなる癖にこれ以上俺をどうしたいねん。
でも…俺も、Aのその顔好きやで。
嬉しそうに、幸せそうにに俺だけに向けてくれるその顔がどうしようもなく好きや。
…なぁ、好きやねんて。
行かんといてよ…。
こぼれそうになる言葉を喉の奥に押し込んで。
「…そや。プレゼント買うてきてん」
込み上げるやり場のない気持ちを振り払うように、立ち上がる。
いつ渡そうか迷ってたから帰って来てすぐに寝室に置いておいたそれを取りに向かう。
「…また高いやつだし」
戻って来た俺の手にぶら下がってるブランドの袋を見てAが不満気に見上げてきた。
まぁ、今回はほんまに奮発したから否定はせんけど。
「最後なんやからええやん」
Aの隣に腰を下ろした。
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年7月3日 18時
