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もー、なんで言うかなぁ、とみかちゃんを恨めしそうに見るしげるくん。
「しげはAさんと飲むの禁止ね」
ゆみちゃんに釘を刺されて不満そう。
その顔に思わず笑ってしまう。
「Aさんも笑わないでください」
「ふふ、ごめんごめん」
並んだお料理はゆみちゃんの言う通り、本当にどれも美味しくて。
わいわいと話しているうちにあっという間になくなった。
みんなとこんな風にご飯を食べた事ないから、尚更美味しかったのかもしれないけど。
「…Aさん、お店ってまだ入れますか？」
帰り際、ポツリと呟いたのはみかちゃんだった。
「店？まだ全然大丈夫だよ？」
「最後に覗かせてもらっても良いですか？」
「もちろん。でももう業者さんに全部引き取ってもらっちゃったから何にもないけど」
「はい。大丈夫です」
調理器具なんかはまた使うかもしれないから、実家に送ってしまったし。
もう本当に何にも残されてない、私の小さな城。
久しぶりに店に入る3人は、店内を見回して少し寂しそうな顔をした。
「何にもないと広いですね」
「意外とね」
私もぐるりと店内を見渡した。
賑わうお客さんの声。美味しかったと笑顔を向けてくれる常連さん。
閉店後に知らん顔して飲みに来るいつきさん。
カウンターで、私を優しく見上げる忠義くん。
もちろん、この3人も。
たくさんの思い出が詰まってる。
「みんな、今まで…ありがとうね」
また、目頭が熱くなる。
誤魔化すように笑って見せた。
最後は迷惑ばっかり掛けてしまった。
それでも待っていてくれたこの子たちの事も決して忘れたくない。
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年7月3日 18時
