104.(side T.O) ページ5
少し前やったら、誰かと一緒に住むなんて想像も出来んかった。
自分のペースが乱されるのも嫌やし、別れてもうたら面倒でしかないやん。
せやから想像出来んかった。
でも、好きな人が待ってる家に帰るってええもんやなと、Aと暮らし始めて思うねん。
自分でも驚いてる。
今日も仕事終わり、はよAが待つ家に帰りたくて、さっさと挨拶を済ませてスタジオを後にする。
今から帰るとメッセージを送りながら、車に乗り込んだ。
それやのに…。
「…大倉さん、あの…しばらくAさんと何処かに行ったり、Aさんのお店に行ったりしないでください」
俺が乗り込んだのを確認して、車を発車させる前にそう言うてくるマネージャーの小林くん。
バックミラー越し、申し訳なさそうな顔する小林くんと目が合うた。
「……なんで？」
なんで？とは聞き返したものの、そんな事言われる理由なんてそうそうあるわけない。
きっと言うたら俺が不機嫌にでもなると思ってたんやろうけど、小林くんが申し訳なさそうにする理由も多分ない。
「明日発売の週刊誌に大倉さんの記事が出ます」
思ってた通りの答えに、溜息が漏れた。
Aと出かけるなって事は、ツーショットでも撮られたって事やろか。
「…どんな記事？」
「想像通りだと思います。Aさんと2人の所撮られてます。そこに掲載される記事、あります」
「…はよ言えって」
言われて隣の座席の上、クリアファイルに入ったそれを手に取った。
関ジャニ∞、大倉忠義、熱愛発覚！なんてよう見る見出し。
一般人の飲食店経営者とお花見デートやって。
ずっとどっちかの家で過ごしとったし、たまに時間が合えばご飯食べに行くくらいで、それやって数える程しかないのに。
よりによってあの夜撮られてたんや。
ついてへんな、そう思いながら記事に目を通す。
そこには俺の車に乗り込むA。
ほんまは車の中だけで見るつもりやったけど、あんまり人もおらんかったし、桜並木を肩寄せて歩いてもうた。
後悔しても今更やし、もう間違いなく俺やなってわかる写真。暗がりの中よう撮れとるわ。
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年7月3日 18時
