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忠義くんが出て行ってしまって、そのまま1人散々泣いた私は、まるで子供のようにそのうちに泣き疲れて、いつの間にか眠っていた。
戻ってきた忠義くんが運んでくれたらしく、気付けばベッドの上だったし、それでいて運んでくれた本人の姿はもうなかった。
怒ってるのかな。
怒ってるよね。だって自分の知らないうちに彼女が地元に帰ろうとしてるんだもん。
一緒に住んでいるとこういう時に困る。
普段ケンカになるような事もあまりないから尚更だ。
昨日の今日だし明らかに不機嫌な忠義くん。
夜は帰って来たのも遅かったし、疲れているのかシャワーを浴びてすぐに寝てしまった。
起きてからもおはようとは言ってくれたものの、むすっとテレビを見て。
そのうちに黙々と仕事に行く支度を始めた。
身の置き所がなくて、何をするわけでもないのにキッチンに立ったまま。
つけっぱなしになっているテレビから流れる星座占いを眺めていた。
あぁ…見事に最下位だし。
ラッキーアイテム、ヨーグルトって…さっき食べたけど。全然ラッキーじゃないし。
心の中でぶつくさ言っていると、ふと視線を感じて、顔を向ける。
リビングのドアの前で、じっと私を見てる忠義くんと目が合った。
「…俺もう仕事行くけど」
相変わらずむすっとしてるけど、ポツリと口を尖らせた忠義くんのおかげで、なんとも言えない気まずい空気が少し和らいだ。
見送り、行っても良いみたい。
「…昨日はごめんね」
玄関の前、手を伸ばして忠義くんの服を掴む。
振り返った顔を見上げて、それはもう申し訳ない程度に呟いた。
むっと漂っていた雰囲気はいくらか和らいで、私を見下ろす忠義くんは、はぁと小さな溜息を漏らした。
「…Aが謝る事ちゃうやろ」
私が謝る事だと思う。
昨日だって忠義くんの優しさに散々甘えた癖に、最後にはその気持ちを無下にしてしまったのは私だ。
「…私が謝る事だよ。ごめんなさい」
「めっちゃ重かったで？」
「…ん？え？あっ、そっちじゃなくて！いやそれもごめんだけど…ていうかよく運べたね」
「愛の力ちゃう？」
本気なのか冗談なのか、口元を緩めて。
ゆっくりと伸びてきた手が、いつものように私の頭を撫でた。
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年7月3日 18時
