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そうは言っても簡単にわかったと返事が出来る内容じゃない。
実家に帰るという事は、店を新たに開くという事はもう帰って来ない覚悟が必要だ。
忠義くんと離れて、そんな事出来るんだろうか。
せめて少しずつでも前に進まないといけない気がして、なるべく店に行くようにしていた。
正直、今お店に行くのは辛い。
思い出したように鳴る電話には相変わらず頭痛が始まってしまうし、未だに出る事も出来なくて。
私はいつの間にこんなに弱くなってしまったんだろう。
不安と焦燥感が付きまとう。
「…ただいま」
相変わらず自分の活動に加えプロデューサーとしての仕事をこなす忠義くんは心配になるくらい忙しい。
深夜に帰宅する事も多い。
そんな時は先に寝ててとは言われるものの、そうもいかなくて。
今日はメンバー揃って番組の収録で、帰りは遅くなると言われていたけど、いつも通り帰りを待つうちにいつの間にか寝てしまっていたらしい。
「ごめん、寝ちゃってた。おかえり」
「待ってなくてええって言うてんのに」
私の頭を一度だけ撫でた後、呆れた顔して微笑む忠義くんの表情からは疲れが滲んでいる。
「…お疲れ様。大丈夫？」
「今日新企画の収録やってんけど、カロリー高めやったわ。しんど…」
あまり休みもなく、こんな時間まで仕事していれば疲れるに決まってる。
言葉通り今日の収録は大変だったんだろう。
いつも以上に疲れてる様子に、やっぱり言われた通り寝ていた方が忠義くんも気が楽だったかもしれないと少しだけ後悔する。
「シャワー浴びてくるわ。ほんまに寝て？」
あー疲れた、とこぼしながら浴室に向かう後ろ姿になんて声を掛けて良いかわからず、唇を噛んだ。
きっとそんな事はないんだろうけど、ここにいる事で忠義くんの負担になってるんじゃないかとネガティブな考えが頭をぐるぐると回って。
勝手に涙が溢れていく。
地元に帰って来ないかと心配そうな両親の顔が浮かぶ。
ここを離れたら少しは楽になれるんだろうか…そんな事が頭をよぎった私は多分、もうとっくに限界を超えていた。
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年7月3日 18時
