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「…あの記事に載ってるのは本当にA？」
誰かに聞いたのか、きっとこの1ヶ月で私に何があったのか知っているんだろう。
店にはもちろん地元の友達も何度も来てくれている。
ネットに晒されてしまったし、誰かが気付くのは当然だ。誹謗中傷の言葉ももしかしたら見てしまったのかもしれない。
「…もう大人だから誰とお付き合いしてても良いと思うし、口を出すつもりはないけど、親としては心配」
言っている事は充分理解できる。
娘がどんな目に合っているかと思ったらそれは心配だろう。
むしろ1ヶ月何も言わずに見守ってくれていたんだと思う。
「辛い思いしてない？」
「…してない」
「そのせいでお店も休んでるんじゃないの？」
「…違う」
それなのに私は、不貞腐れた子供のようにプイっと目の前の2人から視線を外して、口をつぐんだ。
少しの沈黙。
重い空気に包まれて、お母さんが溜息を吐き出した。
「…おばあちゃんの住んでた家ね。今すぐじゃないけど処分するつもりだから」
「……え？」
おばあちゃんが住んでいたのは、かつておじいちゃんが営んでいたレストランの二階。
つまり、おじいちゃんのお店がなくなるって事になる。
「…なんで」
「もうそれなりに古いし。でももしAが帰ってきて住むなり、お店を開くなりしてくれたらそうはしないんだけど」
「Aは今のままでいいのか？おまえが今まで頑張って来た事が無駄になってもいいのか？」
今まで押し黙っていたお父さんが重い口を開いた。
2人して、そんな言い方…ズルい。
ずっと休むつもりはないけど、確かに今は店を再開出来る気がしない。
こないだの一件で、情けない自分に気持ちが萎えていた。
それに加えて、すっかり忠義くんに依存してる自分にもうんざりしていた。
「一回帰って来ない？先の事は、元気になってから考えれば良いんじゃない？」
きっと不貞腐れた顔のままの私を諭すように。
優しい声色のお母さんがまだ少し困った顔のまま、小さく微笑んだ。
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年7月3日 18時
