好きになってもいいですか？3(緑) (ページ28)

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おばあちゃんは、なんとか一命を取り留めたけど、もう何があってもおかしくない状態らしい。

お店休んでるなら一度帰って来なさいと電話の向こうで有無を言わさずそう言ったお母さん。

お店を休んでる事は言ってなかったし、どういう経緯でそれを知ったのかはわからないけど。

休んでいる理由を聞いて来なかったのはお母さんなりの優しさなのかもしれない。

次の日、申し訳ないけど忠義くんが仕事に出るより先に家を出た。

早る気持ちを抑えて、電車に揺られる。

窓から覗く景色がだんだんと懐かしいものに変わっていく。

その流れる景色を眺めながら、出るのは溜息ばかりだ。

悪い事って言うのは重なるものだと、つくづく思う。

だけどこんな事でもなければ、きっと帰って来なかったとも思う。

電車を降りて真っ直ぐに向かった病院。

ベッドに横たわるおばあちゃんはまるで眠っているようだけど。

隣にはピコンピコンと音を立てるモニターが置かれていて、酸素マスクが口元を覆っている。

久しぶりに見るおばあちゃんは随分と小さくなったように感じた。

ベッドサイドに置かれたパイプ椅子に、静かに腰掛ける。

「…おばあちゃん」

寝ているおばあちゃんに声を掛けた。

「おばあちゃん、帰ってきたよ。ただいま」

最後におばあちゃんに会ったのはこないだゆきちゃんの結婚式で帰省した時だ。

あの時はおかえりと微笑んでくれたのに、今は何も反応しない。

手を伸ばして、ぎゅっと皺だらけのその手を握りしめた。

自分の事で頭がいっぱいだったとはいえ、こんな事になるなら休んでいる間に一度くらい帰ってくれば良かった。

後悔しても遅いけど、そう思わずにはいられない。

もう一度ぎゅっと力を込めると、おばあちゃんの指先がピクリと反応した。

「…おばあちゃん？」

目は閉じたままだったけど、おばあちゃんがうっすら微笑んだ気がした。

おばあちゃんの笑った顔を見たのはそれが最後だった。