119.(side T.O) ページ20
Aが店を休む事にしてから2週間。
やっぱりそう簡単には元通りとはいかないし、無理に明るく振る舞ってるのは見ていて辛い。
時々何か考えるようにぼーっとする事も多い。
いつも側におれるわけちゃうから、気付いた時にはなるべく隣におるようにしてる。
何を話すわけでもなくただ手を繋いでいるその時間はAだけやなくて、俺も案外心地良い時間やったりする。
「A、どうなんや？」
週刊誌の事は事前にメンバーそれぞれ話があったらしい。
ヤスだけやなくてマルからも連絡があった。
横山くんは顔を合わせた時に心配そうな顔して声を掛けてくれた。
最後には気付けや言うたやろ、と言われてもうて返す言葉もなかったけど。
なんやかんやAを気に掛けとる信ちゃんは、俺の事はもちろんやけどAの事も随分心配してくれて。
時々様子を聞いてくる。
「…無理して明るくはしとるけど」
「まぁ、今は余計な事は考えんとゆっくり休むようにな。今まで頑張ってたんやから、ご褒美やと思ったらええねん」
なかなかそうもいかんのが現実やけど、信ちゃんのこういうポジティブな所は純粋に凄いと思う。
何気なく掛けてくれる一言がほんまにありがたい。
今までも何度も救われた。
「言うとく。ありがとう」
「それにしても腕鈍るんちゃう？飯でも食いに行ったろか？」
「信ちゃんがAに会いたいだけやろ」
「んなわけあるか」
大袈裟に笑う信ちゃんに、でもそれもええかなと思う。
ストレス発散に出掛けても飲みに行っても俺は構わんのやけど、すっかり消極的になってもうた気がする。
仕事もしてないからとスーパーへ買い物に出るくらいで閉じこもってばっかりやし。
そのくせもともと休みなんてほとんどない子やったから、持て余した時間の使い方がわからんらしい。
昨日も暇やとこぼしていた。
「来るんやったら直接言うたってよ」
「それもそやな」
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年7月3日 18時
