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それに気付いたのは、ベッドに入る前だった。
充電しようと手に取ったスマホに、通知が届いていた事に気付く。
お店のSNSにコメントが届いてる通知。
こんな時間に珍しいと思いながらそれを開いた。
だけど目にした予想外のコメントに思考回路が一瞬で停止した。
忠義くんと私の事を確認するようなその内容。しかも一件だけじゃない。
「Aー！」
先にベッドに入った忠義くんが、私を呼ぶ。
その声に、我に返って慌てて画面を閉じた。
「抱き枕ないと寝れへんやろ、はよぉ」
「うん、いま行く」
安田さんの電話もあって、ご機嫌になった忠義くんには絶対気付かれたくない。
きっと何かの見間違いだ。そう思う事にして、ベッドに潜り込む。
固く目を閉じた。
大丈夫、きっと大丈夫──。
私の願いも虚しく、目が覚めてもコメントは見間違いじゃなかったし、昨夜よりその量は増えている。
マナーモードにでもしておけば良かったけど、うっかりしていた。
ソファの上に置きっ放したスマホが度々鳴るから、とうとう忠義くんが反応した。
遅めの朝食を食べているその手が止まる。
「めっちゃスマホ鳴ってるやん。何？なんかあったん？」
「ん？地元のグループメールじゃない？友達が出産したって昨日遅くに報告あったから」
地元の友達が出産したのは本当。報告があったのは昨日じゃないけど、それくらいの嘘は見逃して欲しい。
迷わず答えた私を疑う様子はなく、忠義くんはふーんと呟いた。
「帰るん？」
「お店もあるし、3人目だし。まぁ、赤ちゃんは見たいけど、お祝いだけ送る」
「…そうなんや」
「うるさいね、ごめん。音、消すね」
「別にええけど…返事せぇへんの？」
「後でするから大丈夫」
慌ててスマホをマナーモードに切り替える。そのまま上着のポケットに押し込んだ。
忠義くんが出掛けた後、相変わらず時々震えるスマホをポケットから取り出した。
恐る恐る通知をタップする。
見た事もないコメントの数。
ほとんどが忠義くんとの事についてで、私に向けられているであろう誹謗中傷の言葉、攻撃的な言葉たちに言葉を失った。
とりあえずコメント欄は閉じよう。
制限すれば、こんな事はなくなるだろう。
だけどそうする事で忠義くんの事を認めた事にはならないかな。
何より、時々見ているという忠義くんが不思議に思わないかな。
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年7月3日 18時
