101.(side Y.Y) ページ2
ヒナとは前からの知り合いみたいやし、やっぱり普通の恋愛とはちゃうからな。
アイツで役に立つかわからんけど。
きっと俺の言葉から気持ち汲み取ってくれたんやろ、Aちゃんは小さく微笑んだ。
「でも大丈夫です。困った事は忠義くんにちゃんと言います」
「…それが正解やな」
その顔と、真っ直ぐな言葉から大倉への気持ちが溢れとる。
「…ご馳走さま、かえって悪かったわ」
「いえ、こちらこそ。楽しかったです。ありがとうございました」
店のドアの前、もう一度頭を下げたAちゃん。
少しあったかい気持ちになって、車に乗り込んだ。
「そういや、こないだAちゃんに会うたで」
メンバー揃っての仕事やったその日、大倉にこないだの事を話した。
別にわざわざ言わんでもええと思うんやけど、紅茶までご馳走になってもうたから、少し気が引ける。
「Aも言うてた。オフやったのにごめんなぁ」
「Aちゃん、ちょっとおもろいよな」
「ん？可愛ええやろ？」
どこをどう解釈してその質問に辿り着いたのかようわからへんけど。
確かに大倉のことニコニコ話しとる彼女は可愛ええと思ったわ。
「そんな顔で話しかけるな言われたんやけど」
「ふはっ、なんやそれ」
スマホでゲームでもしとんのか、視線を落としたままの大倉の口元が緩む。
「意味わからんよな？全力で突っ込んでもうたわ」
「ちょっととぼけたとこあんねん。フルネームで呼ばれへんかった？」
「それは普通に横山さんやったけど」
「俺初めてん時フルネームやってん。めっちゃ笑たわ」
思い出しとるんか大倉の口元がますます緩くなる。
「おまえ、顔おかしなってる自覚ある？」
俺の言葉に手を止めて、俺を見て固まる大倉の顔。
なんちゅー顔をしとんねん。笑いそうになるわ。
「………ない」
「めっちゃニヤけとるから気付けや」
「…それは気付けるわ」
そんなニヤけとる？って自分の口元押さえながらも、緩んだ顔は簡単には抑えられへんらしい。
まぁええけど。
「まぁ、ほんまに…そんなに大事やったらいろいろ気付けるんやで」
「わかってるって」
いちいち言われんでも大倉もようわかってるやろうけど、なかなか思うようにはいかんのは事実やから。
せめて自分たちの望まん別れだけはせんといて欲しいとそのニヤけた顔を見て、やっぱりそう思った。
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年7月3日 18時
