94.(side T.O) ページ45
「というわけで、改めましてたつくんの彼女です」
何故だか客のおらん店内。
信ちゃんに紹介されて、初めましてこんばんはとAが頭を下げた。
…おかしい。
どう考えてもおかしいやろ。
いろいろと突っ込み所があり過ぎてどこから突っ込んでええかわからへん。
でも、まずは…コイツやな。
「…なんでマルがおんねん」
「え？俺？」
「おまえは出禁や言うてるやろ」
「せやからそれたちょが決める事ちゃうやろ」
そう言うてわざとらしくマルがAに向かって久しぶりやねぇと無駄な笑顔を向けた。
Aもまた顔赤らめとるし。
「信ちゃんも、それ俺の役目やん。Aも普通にこんばんはちゃうねん。だいたいなんでマルちゃんと信ちゃんがおんの？しかもなんで貸し切りなん？いろいろおかしいやろ？」
ヤスに言われてこの日やったらみんなの予定合いそうやからとAに個室頼んだのは俺やねん。
てっきりみんなって言うから約束してたヤスと横山くんだけやと思っとったのに。
まさかほんまにみんなやった事にビックリやわ。忙しいのによう予定が合うたよな。
「最近こういう機会なかなかないやん？せっかくやからみんなで来れたらええなぁって声掛けてみてん」
ヤスがニコニコ言うてるけど、少し前に新年会せぇへんかったっけ？
しかもわざわざ貸し切りにせんでも5人やったら個室もいけたんちゃうかな？
「せっかくやし、貸し切りにしたらAも一緒に飲めるやろ」
そこはどうやら信ちゃんが気を利かせてくれたらしい。
ありがたいような、ありがたくないような気持ちがせん事もないけど。もうなんでもええわ。
「ご注文決まりましたらお呼びください」
Aは俺らのやり取りを楽しそうに眺めながら、もう一度頭を下げた。
そんなAを呼び止めて、信ちゃんがとりあえずビールとあと適当にとりあえず！と無茶な注文しとる。
Aは苦笑いしながらみかちゃんにビールを頼んで、カウンターに戻って行った。
「ちなみに自分は何ちゃんなん？」
「あー、みかです」
「みかちゃん、ありがとう」
ビールを運ぶみかちゃんが、ヤスに笑い掛けられて珍しく顔を赤らめた。
今日は俺らだけやからみかちゃんしかおらんらしい。
いつも人の顔見てニヤニヤばっかしとるくせに、恥ずかしそうに目を伏せてごゆっくりどうぞなんて聞いた事ないか細い声出して、テーブルを後にする。
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年5月10日 17時
