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「ちょっとー、もう5分以上経ったってー」



私が反応しないから拗ねたのか、飽きたのか、最後にそう漏らしてゴロゴロするのをようやくやめた。

本当は掃除機もかけたい所だけどこの様子じゃ、無理だろう。

お待たせ、とベッドの端に腰掛ける。

すかさず忠義くんの腕が腰に巻き付いた。



「遅いー」

「ごめん、ごめん」



今日の忠義くんは随分とまぁ…オブラートに包んであげれないくらいワガママだな。



「どうしたの?今日は随分甘えん坊モードだね?」



それでも言葉を選んで聞いてみる。

やっぱり会えない日が続くとその反動で会った時はお互い離れがたくて、ついついくっついてしまうけど。

最近はよく来てくれてるから、反動ってわけではなさそうだ。



「…そんな事ないで?」

「そんな事あるよ?」

「…あんまり言いたくないんやけど」



はぁ、と忠義くんは溜息を1つ吐き出した。

その小さな溜息に聞かない方が良いのかなとも思う。

でも…。



「そんな言い方されたら余計気になる」

「……ストレス溜まってんねん」



ぎゅうっと腰に抱き着いたまま、忠義くんがポツリと漏らした。




「…最近またひどいヤツおんねん」



ひどいヤツとはきっとマナーの悪い子たちの事だろう。弱々しい声が私の胸に刺さる。

ワガママとか思ってごめん、小さく心の中で手を合わせて、その柔らかな髪の毛を撫でた。



「ほんま疲れもストレスも全然取れへん」



力のない言葉とは裏腹に、腰に回る腕の力が強くなる。



「私で良ければ話くらい聞くよ?」

「Aとおるのに、わざわざイライラしたくないやん」

「でも、辛そうなのに…何も出来ない…」

「何にもせんでええから、ぎゅっとされといて」

「ん。じゃあ、ぎゅっとされとく」

「ほなもっかいこっち、な」



今日3度目のベッドの中。

これで疲れとストレスが取れるかもわからないけど。

忠義くんが少しでも元気になるなら、なんなりと。いくらでも。


忠義くんが少しでもストレスなく仕事が出来ると良いな。

そう願いながら、私も忠義くんをぎゅっと抱きしめた。

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作者名:咲菜 | 作成日時:2022年5月10日 17時

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