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それはもうとっくに日付けが変わった頃だった。
そろそろ寝ようかなとベッドに潜り込んだ所で、静かな部屋にインターホンが鳴り響いた。
今日来るなんて連絡はなかったけど、こんな時間だし、きっと忠義くんだ。
そう思って迷わず玄関を開けると、村上さんと…その肩にもたれ掛かるように忠義くんが立っていた。
「遅くにすまん」
私の顔を見るなり声を潜める村上さんが小さく頭を下げた。
この状況を見れば村上さんが謝らなくて良い事は容易に想像出来る。
「Aちゃんやぁ。ただいまぁ」
きっと犯人である、当の本人は私を見て緩い笑顔を浮かべて、たいして力の入っていないその大きな体でいきなり抱きついてきた。
もちろん支え切れずにバランスを崩す。
そんな私を慌てて村上さんが支えてくれた。
「おまえ、危ないやろが！」
「信ちゃんいたいー」
「いたいー、ちゃうねん。Aが潰れるやろ」
私から忠義くんを引き離して、ほんまにもー、と呟きながらなんとかソファに横にする。
「こんな時間にすまんな。Aんとこ行く言うて聞かんし、勝手に場所言うてもうてるし」
「いえ、大丈夫です」
「ほんで悪いけどタクシー待たせてんねん。もう行くわ。明日そない早やないみたいやからゆっくりさせたって」
「ありがとうございます」
「…それよりおまえ。確認する前に玄関開けたらアカンやろ」
「…気をつけます」
最後に私をちらっと見て、お母さんみたいに注意してから、慌てて部屋を出て行った。
残された、この人。
確かに今日はメンバーさんと新年会だって言ってたけど、随分楽しかったらしい。
ソファに身を預けて、私を見上げる笑顔がいつもよりもゆるゆるだ。
「んふ、ただいまぁ」
「おかえり。大丈夫？」
「ちょっと飲み過ぎたわぁ」
上機嫌に呟いて、今にも眠ってしまいそう。
水持って来ようか？と聞く私に小さく首を振って、ゆっくりと瞼が閉じていく。
さっき村上さんも随分大変そうに肩を貸してたから、大きな忠義くんをすぐそこのベッドまで連れて行く自信がない。
寝てしまう前になんとか移動して欲しくて、体を揺すってみる。
「忠義くん歩ける？ベッド行こ？」
だけど本人は動く気がないらしい。
声を掛けてみても、あっという間に閉じてしまった瞼はピクリとも動かない。
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年5月10日 17時
