73.(side T.O) ページ24
実は、ここのところ、Aに会えてない。
それと言うのも俺のドラマの撮影が始まったからで。レギュラーの収録もあるし、主題歌俺らでやらせてもろてるし、でなかなかハードなスケジュール。
最後に会うたのは信ちゃんとマルちゃんと店行った時ちゃうかな。
あの日は、調子に乗ったマルに笑顔振りまかれて顔赤くして照れとったから、腹立って。
家に連れ帰って、それはまぁ俺が満足するまで離してやらんかった。
もう無理言いながら乱れるAはめっちゃ可愛かった、なんて思い出して勝手に顔が緩む。
……て、アカンアカン。
俺は仕事中に何を考えとんねん。
「大倉くん、顔。顔」
「………へ？」
「アイドルがしちゃいけない顔してる」
いつの間にか隣におったのは、主演の斉藤さん。
初めてご一緒させていただくけど、気さくで明るい人で年も近いし、随分打ち解けた。
そんな斉藤さんが俺の緩んだ顔を見て、あっはっはと豪快に笑った。
「…すんません」
「いや、謝る事じゃないけど。何？何考えてたらそんな顔になるの？」
「こないだのレギュラー番組の撮影で、メンバーがめっちゃおもろくて」
「本当に〜？」
咄嗟に出た適当な嘘に、笑いながら疑いの目を向けられたけど。
俺もよく見るよ、なんて言うてくれた。
斉藤さんとそのまま少し雑談しとると、そのうちにスタッフさんに呼ばれて撮影が始まる。
結局今日も帰宅したのは時計が深夜を回った頃やった。
Aはもう寝てもうたやろな。
ただいまのメッセージを送ろうとLINEを開いたけど、やめておいた。
だんだんと疲れも溜まってきてるし、変な事思い出してニヤけてしまうし、はよAに会って癒されたい。
そろそろ本物のAに触れたい。
なんてスケジュール見る限りまだしばらく無理そうやから。Aには悪いけど、次会うた時も俺が満足するまで離してやれへんと思う。
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年5月10日 17時
