48. ページ48
好きやねん、そう言った忠義くんが私に優しくキスをした。
降り注ぐ甘いキスに溶けそうになる私を止めたのは、お風呂が沸いた事を知らせる給湯器の抑揚のない声。
「…タイミング悪」
その声にちょっと溜息をついて、ゆっくりあったまっておいでって忠義くんが呟いた。
促されるまま、お風呂場へ向かう。
今更だけど突然の展開に頭がついていかなくて。
湯船に浸かって揺れる水面をぼーっと眺めていると、もしかしたらやっぱり何かの勘違いかもしれないと思えてきた。
もしくは夢かもしれない。
あんな可愛い彼女と別れてまで、リハビリしよかって忠義くんはちょっとおかしくなってしまったんじゃないかとも思う。
ていうか…リハビリって何だろう。
次々と色んな事が頭に浮かぶけど、結局処理出来なくて、考えることを放棄した。
だけど、お風呂から上がるとさっきまでついてなかったテレビはついてるし、ソファで寛ぐ忠義くんはいるし。
少なくとも夢じゃない事は確かだ。
「あ、出た？」
「…うん」
「ほな、こっち来て」
自分の隣をポンポンと叩きながら、振り返る。
考える事を止めた私が素直にその隣に腰を下ろすと、当たり前のように手が伸びてきて、忠義くんが私を腕の中におさめた。
グッと引き寄せられて、そのまま大きなその体にもたれかかる。
「んふ、ええ匂い〜」
なんていつもよりちょっとご機嫌な声がして、忠義くんの柔らかい髪の毛が私の首筋をくすぐった。
「めっちゃあったまってる」
「ゆっくり入らせてもらいました」
「疲れ取れた？」
「うん」
「ほなもうちょっと起きてられる？渡したいもんあんねん」
首元に顔を埋めながら話すからくすぐったいし、
ちょっと抵抗してみたけど、止めてくれなくて。
震える肩に優しくキスが落ちてきた。
「…ん、何？」
「クリスマスやったから、プレゼント買うてきた」
そう言って顔を上げて、私はその腕から解放される。
徐に立ち上がった忠義くんが荷物の中から取り出した小さめの紙袋。
「ほんまはなぁ、ずっと付けれるもんにしたかったんやけど…仕事中は出来んよなぁって」
その様子を目で追っていると、また私の隣に腰を下ろした忠義くんと自然と目が合う。
ふっとその目尻に皺が寄る。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 179人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：咲菜 | 作成日時：2022年4月3日 21時
