46.(side T.O) ページ46
大学生の純情男子を掴まえて、牽制するような事言うて、大人気ないとは思うけど。
しげるくんの素直な返事にちょっと満足する。
「…人に言うたらアカンで？」
「はい。それは、もちろん」
最後に念の為に釘刺しておくと、ちょうど外から戻ってきたみかちゃんに見つかって、しげに絡まないで下さいとか言われてもうたけど。
「仕事慣れたか聞いてただけやし」
「…あやしい」
「あやしくないわ。もうええからはよ片付けてって」
みかちゃんの疑うような目が俺の言葉にニヤニヤしたものに変わっていく。
「んふ、久しぶりですもんね」
「…わかってんならはよして」
朝からずっと待ってんねん。
この時間も長くてしゃーないねん。
しばらくしてようやく片付けを終えたみかちゃんとバイト君が並んで帰って行くのを見送った。
「Aちゃんは？もう帰れるん？」
「帰れるけど…」
「ほな帰ろ？着替えてきて？タクシー呼んどく」
戸惑うAちゃんを無視して、勝手にタクシー呼んで。
到着したタクシーに押し込んで。
勝手に行き先を告げて帰ってきたAちゃんの家。
狭い言うてたけど、キッチンは広いし、きっと普段Aちゃんが寛いでるんやろうソファもあるし、ベッドもある。
言う程狭く感じないその部屋。
Aちゃんが寒いねって言いながらエアコンのスイッチを入れた。
「なんか飲む？」
部屋はまだ寒くて上着を着たまま、キッチンでお湯沸かそうとしとるから慌てて止める。
「なんもいらんて。先にシャワー浴びてきて？寒いからお風呂入ってもええけど」
「…沸くまで時間かかるから。それともビール飲む？」
への字になった眉毛で少し微笑んで、今度は冷蔵庫を開けるから、後ろから手を伸ばして冷蔵庫の扉を閉めた。
振り返って俺を見上げるAちゃんが困り果てた顔をする。
「いらんて言うてる」
その目を覗き込むとごめんと微かに呟いた。
ごめん、てなんやねん。
確かに強引に帰ってきてもうたけど、勝手に勘違いして困らんといて欲しい。
「もー、なんちゅー顔してんねん」
そのままAちゃんを抱きしめた。
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年4月3日 21時
